愛知県内有数の収穫量を誇ってきた豊田市のナシが、この10年余で7、8割減少した。後継者難に悩む農家の授粉作業を、ミツバチが助けている。雨上がりの7日、花びらが落ち始めたナシ畑を、花から花へ飛び回っていた。

豊田市福受(ふくじゅ)地区では、ナシ農家15戸が市内の養蜂家からミツバチを借り、開花に合わせて2日に巣箱を設置した。ナシは異なる品種の花粉でないと受精しにくく、幼虫のえさの花粉を求めて飛び回るミツバチを利用した授粉を、地区では60年ほど前から続けている。

 市やJAあいち豊田によると、2010年に市内で約100ヘクタールだったナシの栽培面積は現在27ヘクタール。約1700トンだった収穫量も、昨年は370トンだった。福受地区のナシ農家も10年の30戸から半減。「後継者がおらんもんで。麦畑に変わっていく」と栽培農家、須田隆則さんの顔は曇りがちだ。

 「人の手による毛ばたきで授粉する時間を、ほかの作業に充てられる」と喜ぶミツバチの「出張」は、あと数日。7月下旬には愛甘水、あけみずといった品種を出荷予定だが「花が早い今年、収穫も早まる可能性もある」という。(中川史)
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