※毎日新聞

 2016年7月に入所者19人が殺害される事件があった相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で東京パラリンピックの聖火の採火をすることについて、事件の遺族や被害者家族が中止を求める意向であることが判明した。13日に神奈川県と同市に要請する。遺族らは「まだ心の傷が癒えていない。フェスティバルの一環としての採火に違和感を持つ」などと説明している。

 東京オリンピック閉会後にスタートするパラリンピックの聖火リレーは8月12日から各地で順次採火されたものと、パラリンピック発祥の地とされる英国のストーク・マンデビルで採火されたものを東京に集め、同24日に開会式が行われる国立競技場に届けられる。

 相模原市は3月31日、やまゆり園で採火することを発表した。理由について市は「事件を決して風化させず、偏見や差別のない共生社会を園や市民と共に築いていく」というメッセージが共生社会の実現を目指すパラリンピックの理念に合致すると説明する。

 中止を要請するのは、事件で娘の美帆さん(当時19歳)を失った母親と、重傷を負った尾野一矢さん(48)の父剛志さん(77)。19人が殺害された現場でパラリンピックという祭典の一環としての採火を実施することに「遺族、被害者家族はもちろん、多くの国民が違和感を持つ」と指摘している。

 要請書によると、母親らは3月23日の報道で採火の事実を知ったといい、県や市から決定や発表の前に遺族らへの説明はなかった。県から遺族らに文書が届いたのは4月以降だったという。

 市オリンピック・パラリンピック推進課の担当者は、遺族と被害者家族が中止を要請することについて「被害を受けた人たちの思いを率直に受け止め、私たちの考えも改めて説明したい」と話した。【池田直】

 ◇遺族・関係者が採火中止を求める主な理由

・19人が亡くなり、家族が犠牲になった場所で採火が行われるのは違和感がある。パラリンピックはまさにフェスティバル(祭典)であり、レクイエム(鎮魂)としての採火にするのはほとんど不可能だ。多くの国民も違和感を持つ

・関係者はいまだ心の傷が癒えていない。神奈川県と相模原市は事件の重みや、遺族、被害者家族のつらい心の傷に対し、寄り添った配慮をしているとは到底思えない

・やまゆり園の利用者はパラリンピックとは無縁で、祭典と事件を結びつけることには無理がある

4/12(月) 16:17配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/d12dda42e8d27d290442bad749edf215cb8e53fb?tokyo2020