優秀な科学者を集める中国の「千人計画」など外国の人材招致事業について、全国の国立大学の約3割が、所属する研究者の参加状況を把握していなかったことが読売新聞の調査でわかった。地方の大学が多く、政府の指針がないことなどを理由に挙げた。政府は今後、公的助成を受ける研究者を対象に参加状況などの開示を義務づけ、技術流出の防止策を強化する。

 読売新聞は2〜3月、全国の国立大86校を対象に、所属する研究者が外国の招致事業に参加しているかなどを尋ね、81校(94%)から回答を得た。

 参加状況を「把握している」と答えた大学は47校で、回答した大学の58%だった。一方、「把握していない」は25校(31%)で、中部(6校)や九州(5校)など地方の大学が多かった。

 把握していた47校のうち、東京大や北海道大など40校は、教員の旅費規定や兼業規定などの「学内の規定に基づく」とした。

 各大学は、兵器開発などにつながる物資の輸出管理を強化した2009年の外為法改正などを受け、輸出管理規定も設けている。埼玉大や三重大、香川大など22校は、この輸出管理規定に基づいて把握していた。

 これに対し、「把握していない」と答えた鹿児島大は「輸出管理規定はあるが、人材招致事業の参加把握が目的ではない」と説明。愛媛大も同様で、埼玉大などとは運用が異なっていた。

 また、熊本大は「国の指針がなく報告の義務づけは困難」、岡山大は「報告させる法的根拠がない」とするなど、国の指針がないことなどを未把握の理由に挙げた大学もあった。

 こうした現状も踏まえ、政府は研究者向けの指針を今年中に改定し、外国資金の受け入れや、人材招致事業への参加状況などの開示を義務づける方針。

 大学運営に詳しい浅島誠・帝京大特任教授は「多くの大学が世界の潮流を意識し、技術流出の防止策を強化してきたが、一部の大学はまだ意識が甘い。政府は、事務作業を担う大学の負担にも配慮しつつ、実効性のある指針を策定する必要がある」と話している。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210417-OYT1T50298/