今アメリカで社会的に問題となっている、アジア系アメリカ人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)。なぜ今、急増しているのか。日本人はどう捉えるべきなのか。

 東京大学中退の経歴で、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(44)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。

 前回に引き続き、ヘイトクライムが増加した背景や、日本人がとるべき行動に迫る。(以下、ダースレイダーさんの寄稿)。

「アジア系=ウイルス」のイメージを拡散したトランプ

アジア系アメリカ人にはある種の“別物扱い”をされてきた歴史があるんですが、2020年からアメリカはコロナ禍に突入していくことになります。COVID-19という正式名称があるウイルスが、最初に大々的に報道されたのが中国の武漢市。そして感染が拡大し、武漢が封鎖されて……というニュースが出てきます。

 アメリカで拡大するコロナウイルスはヨーロッパを経由してきたと言われているんですけど、このときの大統領であるドナルド・トランプ前大統領は、COVID-19という名称は使わずに、執拗に「チャイナウイルス」という言い方をしたり、カンフーをもじった「カンフルー」(フルーは英語で風邪という意味)という言い方をしたり。

 あるいは、マイク・ポンペオ元国務長官などトランプの周辺の人たちが「武漢ウィルス」という言い方をしていました。特定の国や地名、属性と病気を結びつける言い方をオフィシャルな場でもしたし、支持者向けのメールなどでもそういった呼び方を続けました。

 これによって、「アジア系の人たちが持ち込んだ」「アジア系の人たち=ウイルス」というイメージを広げました。特に、アメリカにおいて感染が拡大し、非常に怖い病気としてみんなが恐れるなかで「この責任は誰にあるんだ」としたときに、恰好の的として「アジアから来た病気がアメリカで猛威をふるっている」というイメージを拡散する。これをトランプ前大統領が率先してやっていました。

アジア系アメリカ人へのヘイトクライムが増加
実際に、データ上では2020年3〜4月くらいからアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムの数が一気に増えています。

 カリフォルニア州立大サンバナディーノ校の憎悪・過激主義研究センターが主要16都市で行った調査によれば、アジア人に対するヘイトクライムは2019年度と比較して149%増加しています。これは間違いなくコロナ禍という状況と符合するデータと言えます。

 トランプ前政権はコロナ対策に関しては経済を優先させるという姿勢を取っていて、コロナ対策が遅れたという指摘を受けているなかで、自分のせいでコロナという病気がアメリカで暴れているのではなく、中国・アジアのせいなんだという印象を与えるような言説を繰り返しました。

 さらには、米中の貿易摩擦を発端とした、中国に対しての悪い感情が市民の中で増えている。そういった状況で大統領がお墨付きを与えるように、いま流行っているのはチャイナウイルス、武漢ウイルスなんだという言い方をした。

 アジア人は「forever foreigner(永遠の外国人)」で、自分たちとは違う文化を生きている人たちなんだというイメージと、その人たちが病気を持ち込んでいるんだというイメージがセットになったとき、ヘイトクライムがあちこちで暴発するようになってきた。

「日本は大丈夫」という感覚は通用しない

「日本とアメリカは日米同盟で固く結ばれているから」みたいなデカい話で、「日本人だって言えば大丈夫なんじゃないか」とか言いますが、僕の経験から言っても、アジア系は欧米人から見て、中国人なのか韓国人なのか、まったく見分けがつきません。

 
https://news.yahoo.co.jp/articles/26410a71c8b1f18b548b4cfbb73a84aee69308d9
4/21(水) 8:46配信