デイリー新潮 4/23(金) 6:00

 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、今でも忘れられないある残虐な事件について聞いた。

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 高江洲氏は、これまで3000件以上の清掃を請け負ってきた。殺人現場の仕事を請け負うことも珍しくない。だが、今回ご紹介するケースは、特殊な殺人事件である。

 高江洲氏がいう。

「この仕事を始めた頃の話です。都内の住宅街にある古いアパートの大家さんから、部屋の清掃と消毒をしてほしいという依頼がありました。部屋の間取りは2Kで、託児所として使われていたそうです」

 早速、現場に向かった。

天袋に嬰児の死体
「もっとも部屋は、清掃をする必要がないほど小ぎれいに片付いていました。古いアパートだけあって、押し入れには天袋もありました。普段は使わないものをここに入れていたのだろうと思いました。ところが、なぜか大家さんからその天袋を念入りに消毒して欲しいと言われました。いぶかりながら天袋を開けてみると、強烈な腐敗臭がして思わずのけぞりました」

 とはいえ、天袋はほとんど汚れがなかったという。

「大家さんによると、この部屋で事件があったそうです。天袋から乳児の腐乱遺体が10体、発見されたといいます」

 高江洲氏は、大家さんから話を聞かされ、事件がマスコミで報道されたことを思い出したという。

「本当にかわいそうな事件でした。託児所で働いていた保母が、自分が産んだ子どもを次々と殺害。毛布にくるみ、ビニール袋に包んで自宅で保管していたのです。ところが、腐敗臭がきつくなったため、託児所の天袋に移したということでした」

DNAの違う嬰児
『事件現場清掃人 死と生を看取る者』
 遺体は、事件が発覚する20年前から3年前にかけて産まれた子どもだったという。

「乳児は、ビニール袋に二重、三重にくるまれていたため、体液が染み出ることはありませんでした。ほとんどの遺体はミイラ化していたといいます」

 託児所に勤務する別の保母が部屋を掃除中、天袋から異臭のするビニール袋を発見。110番通報で事件が発覚した。

 高江洲氏は、手を震わせながら天袋の消毒と消臭を行ったという。

「当時の私は、まだこの仕事を始めたばかりで、嫌々ながら清掃をしていました。正直言って、早くこの忌まわしい部屋から逃げ出したかった。こんな仕事はもう辞めようとさえ思いましたね」

 その後の警察の捜査で、乳児の遺体の中に逮捕された女性の子どもではないものもあったという。

「彼女は、すべて自分の子どもと主張していましたが、DNA鑑定の結果、関係のない乳児もいたそうです。所得が低くて子どもを産んでも育てられない親から、乳児を引き取って処分する商売があると聞いたことがあります。彼女も、そんなことをしていたのかもしれません」

 高江洲氏はその後、押し入れの天袋を2度清掃したことがあるという。

「2回とも乳児の遺体が隠されていました。実は、天袋に乳児の遺体を隠して、事件になることは意外と多いんです」

デイリー新潮取材班 2021年4月23日 掲載
https://news.yahoo.co.jp/articles/d5a6db3aa2b51ebb857158dadc5d50b3e518ccd1
古い2Kアパートで乳児「10体の遺体」が隠された場所とは?(※写真はイメージ)
https://i.imgur.com/vuSjazE.jpg