https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042200309&;g=pol
菅義偉政権初の国政選挙となる「4・25トリプル選挙」で、政界が注目しているのが参院広島選挙区の再選挙だ。
次期衆院選だけでなく、9月に予定される自民党総裁選への出馬を目指す岸田文雄前政調会長の命運が懸かる
からだ。昨年9月の菅政権発足で無役となって以来、党内での存在感も薄れ、“ポスト菅”候補の人気番付でも下
位に低迷している岸田氏だけに、地元・広島の再選挙で同氏が主導して擁立した自民公認候補が敗れれば、「総理
・総裁候補としての資格も失いかねない」(自民長老)という厳しい戦いとなっている。
 広島再選挙は、巨額買収による公職選挙法違反で有罪が確定した河井案里前参院議員の当選無効・失職に伴う
もの。「鶏卵」汚職事件での吉川貴盛・元農林水産相の議員辞職に伴う衆院北海道2区と、羽田雄一郎・前立憲民主
党参院幹事長の死去に伴う参院長野選挙区の両補欠選挙との同時実施となった。ただ、自民党はこのトリプル選挙
の北海道補選では、早々に候補擁立を見送る「不戦敗」を選択。さらに、与野党対決の構図となった長野補選も、「
故羽田氏の実弟の“弔い選挙”で自民党も諦めムード」(選挙アナリスト)とされる。このため、広島再選挙が「唯一勝
てる可能性がある選挙」(自民選対)との見方が大勢だ。
 岸田氏は衆院広島1区で当選を重ね、2012年には名門派閥・宏池会(岸田派)の会長となった。広島は故池田勇
人元首相以来の「宏池会の天領」(自民長老)とされ、現在も広島選出の自民党衆参議員の半数が岸田派所属だ。
それだけに、3月末に3度目の自民党県連会長に就任した岸田氏は、4月8日の再選挙告示の前から地元に張り付
き、選挙戦の陣頭指揮に当たっている。
◇負ければ総理・総裁候補から脱落も
 再選挙に出馬したのは、自民党公認で公明党が推薦する元経済産業省課長補佐の西田英範氏(39)と、立憲民
主党など主要野党が推薦・支援する無所属のフリーアナウンサー、宮口治子氏(45)ら6人。2019年7月参院選
での巨額買収事件の舞台となった同選挙区だけに、選挙戦は「政治とカネ」が最大の争点となり、与野党双方の「統
一候補」による事実上の一騎打ちの構図だ。広島は「圧倒的な保守地盤」(自民選対)で、立憲民主も当初は、4年
後の改選時での現職競合への懸念から、野党統一候補で戦うことに及び腰だったとされる。しかし、党内から「4年
後のことなど考えずに、目の前の選挙で自民打倒を目指すべきだ」(幹部)との声が強まり、主要野党の共闘態勢
を構築しての総力戦に持ち込んだ。
 定数2の参院広島選挙区は、これまで与野党がそれぞれ1議席を分け合ってきたが、自民候補は野党候補の2
倍ほどの得票で圧勝してきた。しかし、今回は元法相の河井克行被告(公判中)と夫人の案里氏による買収事件
を受けての再選挙。前回の自民分裂選挙の“後遺症”もあって、「挙党態勢を組めない」(自民選対)のが実態で、
「前回に案里氏を応援した首相も広島に入れない」(同)とされる。
 このため、選挙戦は岸田派所属議員や秘書を大量動員した「文字通りの宏池会選挙」(同派幹部)となっており
、党執行部や他派閥は「お手並み拝見」を決め込む。総裁選出馬を目指す岸田氏は、ここにきて「敵基地攻撃能
力の提起」などで、安倍晋三前首相を中心とする党内保守派に擦り寄る動きも見せているが、自民党内では「再
選挙で負ければ、岸田氏は総理・総裁候補から脱落する」(閣僚経験者)との見方も少なくない。主要メディア
の情勢調査などで「野党候補がリード」との分析もあり、投票直前まで岸田氏の苦闘が続きそうだ