日本経済新聞(2021年4月26日 18:29)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC263HJ0W1A420C2000000/

NTTは26日、次世代通信規格「6G」の技術開発で富士通と業務提携したと発表した。6G向けの基盤技術と見込む光通信技術「IOWN(アイオン)」の開発に富士通が協力する。かつて「電電ファミリー」と呼ばれた通信機器メーカーのうちNECともこの分野で提携しており、ファミリーの一員だった富士通とも今回手を結んだ。

富士通がグループで持つ半導体設計の技術を生かし、光通信技術に対応する半導体開発などを進める。2社は26日にオンライン記者会見を開き、同日付で業務提携したと発表した。会見に出席したNTTの澤田純社長は「(6Gに対応した通信機器の開発には)他社との共同研究が必要だ。(富士通と)方向感が一致した」と話した。

NTTはアイオンと呼ぶ構想で、光信号と電気信号を融合する「光電融合技術」の実用化を進める。この分野で2社は協力する。NTTの子会社「NTTエレクトロニクス」(横浜市)が6月1日に富士通子会社で半導体設計などを手掛ける「富士通アドバンストテクノロジ」(川崎市)に出資し、同社株を約67%保有する。この枠組みで光電融合技術に対応した半導体の開発を進める。

NTTはアイオン構想で、光技術を活用することにより通信網の消費電力を大幅に削減することを目指している。NTTの試算では、現在の100分の1に消費電力を抑えることが可能という。2030年代にはインフラ整備が進むと見込まれる6Gの基盤技術とする目標で、この構想に富士通が協力することになる。

NTTは現在、次世代通信技術で関連企業と幅広く提携している。世界の通信会社や通信機器メーカーが研究開発を競うなか、自前技術にこだわっていては競争に勝てないとの危機感があるからだ。これは国内企業にとどまらない。20年5月には米インテルとデータ通信の高速処理技術で提携した。同マイクロソフトとも19年12月に技術提携している。

ただし、そのなかで通信機器というハードを巡っては、国内メーカーとの提携が先行する。通信機器からの情報漏洩などは米中摩擦のテーマにもなっており、国産機器を使う方が安全との見方が根強いからだ。NTTは今回の富士通との提携に先立ち、20年6月にNECと資本・業務提携しており、提携の枠組みのなかでNEC製の通信機器の活用が見込まれている。

NTTの前身の日本電信電話公社時代から通信機器を供給してきたNECや富士通はかつて「電電ファミリー」と呼ばれた。情報漏洩などの懸念が残る通信機器では身近な国内メーカーと手を結んだ格好だ。メーカー側は、NTTとの提携で海外進出を目指す。26日の記者会見に出席した富士通の時田隆仁社長は「(NTTと提携することが)グローバルな技術競争で戦っていくために必要だった」と説明した。

NTTと富士通は今回、高速データ処理が可能なコンピューティングの研究開発でも協力すると決めた。富士通はスーパーコンピューター「富岳」に代表されるような高度なデータ処理技術を持つ。NTTは富士通の技術を、消費電力を抑えた通信網構築などに生かしていく考えだ。

一方、澤田社長は26日の会見で、3月に発覚した総務省幹部への接待問題を巡り「深くおわびする」と謝罪した。澤田社長はこの問題を巡り、同月に国会での参考人招致に応じたが、記者会見で発言するのは初めてとなった。

NTT社内では、接待問題の究明が遅れれば「次世代通信網に向けた研究開発など中長期戦略が停滞しかねない」(幹部)との懸念の声がでている。NTTは外部の有識者を含めた特別調査委員会で、接待を巡る実情についてなお調査を進めている。