今年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が、名古屋出入国在留管理局に収容中に死亡した問題で、緊急搬送された病院の血液検査で血糖値などが異常に高い数値を示していたことが分かった。医療関係者は「腎機能、肝機能、血糖値いずれも桁違いに悪い。早期に点滴を行い病院に入院させる必要があったのでは」と指摘する。(望月衣塑子)

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心肺停止で病院に搬送された際、病院が行ったウィシュマさんの血液検査の結果。異常な数値が並ぶ

入管の中間報告によると、ウィシュマさんは3月6日午前8時、食事や水分は一切取らず、ベッドに横たわり首を振るなどしていたが、午後1時すぎ、首をかすかに動かす程度になったという。午後2時すぎ、看守が脈拍がないのに気づき救急搬送、午後3時25分、死亡が確認された。

病院が作成した「検査結果照会」と「医師診療録」は緊急搬送された直後に採取された血液検査の結果と肺の画像がA4判3枚にまとめられていた。

「血糖424(基準値範囲70〜109)、尿素窒素89・6(同8・0〜22・0)、クレアチニン4・73(同0・40〜0・70)、AST7992(同13〜33)、ALT7143(同6〜27)」などの数字が並ぶ。

数値の多くが「基準値範囲」を大幅に超過したり、下回ったりしており、基準値内のものがほとんどない。肺の画像も真っ白だった。

在宅医療専門の医師木村知さんはこの結果に「腎機能、肝機能、血糖値いずれも桁違いに悪く、栄養状態も極めて不良だ。ビタミンB1不足や糖尿病があったことなどが見逃されていたのでは」と指摘する。

報告では、入管は経口補水液を与えていたが、点滴はしていない。死体検案医を務めた別の男性医師は「驚くような異常値がずらりと並んでおり全身状態が悪い。意識障害を起こす重症の糖尿病で、脱水とあわせ腎不全や高カリウム血症を起こし貧血も高度。致死的不整脈を誘発するレベル。専門的な医療機関に即入院して治療すべきだった」と分析する。

医師らの指摘について、出入国在留管理庁は「糖尿病などの基礎疾患や甲状腺ホルモンの検査などを病院や入管が行っていたのか、判断は適切だったのかを含め、調査を進めている」と答えている。

◆母親「法務大臣に聞きたい」

衆議院議員会館(東京都千代田区)で27日、立憲民主党の法務部会・多文化共生PT合同会議が開かれウィシュマさんの母親と妹2人がウェブ会議システムで質疑に答えた。

妹は「姉は入管に迷惑扱いされ1人部屋に入れられたと聞いた。ちゃんと病気を見つけず中途半端なやり方をしたのでは。点滴打ってとお願いしたが駄目だった。とても残念だ」と話し、母親は「亡くなる前のビデオを見たい。自分の目で確かめたい」と訴えた。

妹は5月1日に来日予定で、母親は「なぜ、病院に運ばず検査しなかったのか。(上川陽子)法務大臣に聞きたい」と話した。

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ウィシュマ・サンダマリさん(遺族提供)

2021年04月28日 06時00分
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