2021年05月02日07時06分

 政府が導入を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に替わる「イージス・システム搭載艦」2隻について、防衛省は複数の船体を持つ「多胴船」とする案を選択肢の一つとして検討に入った。揺れに強く洋上での長期運用に適しているとの考えからだ。コスト面などに難点があるため、通常の型とする案を含め絞り込みを進める。複数の関係者が明らかにした。


 イージス搭載艦は北朝鮮の弾道ミサイルへの対処が主な任務。防衛省は早ければ、今夏に取りまとめる2022年度予算概算要求に建造費を盛り込み、26年度の完成を目指す。

 多胴船は二つの船体からなる「双胴船」と主船体の脇に二つの副船体を持つ「三胴船」に分かれる。防衛省が建造した艦艇としては、海上自衛隊の双胴船「ひびき」型音響測定艦が3隻ある。この他、防衛省は民間企業が所有する三胴船の高速フェリーを借り上げ、輸送船として使っている。
 多胴船の最大の特長は「耐洋性」と呼ばれる洋上の安定性で、高波でも影響を受けにくい。音響測定艦に採用されたのもそれが理由の一つだ。設計によっては甲板を広く取れ、高速航行も可能という。
 陸上イージス配備は17年に特に相次いだ北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、常時警戒体制を敷くことが目的だった。その代替となるイージス搭載艦も、2隻でできるだけ切れ目のない運用を確保することが求められる。乗組員の負担を軽くする観点からも耐洋性は重要なポイントだ。
 多胴船案については海自に積極的な声が強い。防衛省幹部は「検討する価値はある」と明かし、別の幹部も「現場の意向は重い」と語る。
 一方、多胴船は構造が通常の艦艇より複雑なため、建造コストが膨らみかねない。加えて、防衛省に多胴船の建造・運用実績は3隻の音響測定艦しかない。知見の少なさから、完成時期がずれ込む可能性もありそうだ。

ソース
https://www.jiji.com/sp/article?k=2021050100340&;g=pol