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 日米共同声明に「台湾」の文字が52年ぶりに書き込まれ、あらためて注目される日米vs中国の構図。日米が連携して中国の武力による台湾統一を抑止する狙いだが、思惑通りに行かないのが世の常である。抑止が破られることはないのか。

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 日米と中国が互いに牽制する「インド太平洋」は、世界の貿易量の約5割、またGDPの約6割を占める重要な地域だ。東方の危機を見過ごせば、欧州にも類が及ぶ。早速、英国が空母打撃群のインド太平洋派遣を表明。フランス、ドイツも軍の派遣を進めている。

 英国防省は4月26日、空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群を5月から数カ月間、インド太平洋に派遣すると発表した。空母打撃群は空母1隻、駆逐艦2隻、フリゲート艦2隻、潜水艦1隻、補給艦2隻で編成される。

 クイーン・エリザベスは英海軍史上最大の空母で、垂直離着陸ができる米国製のF35B戦闘機を最大36機搭載する。2017年の就役後、初の本格的な航海となる。地中海からインド洋を通って太平洋へ向かい、日本のほか、米国、韓国、インドとの共同演習が予定されている。
空母打撃群派遣の背景にあるもの

 空母打撃群の派遣は、英政府が3月16日に発表した欧州連合(EU)離脱後の安全保障や外交に関わる方針を包括的にまとめた「統合レビュー」を受けたものだ。

 5部構成の「統合レビュー」は、「中堅国家(ミドルパワー)の成長による影響が2020年代に増大する。インド太平洋は地政学的、経済的な重要性が複数の国家により増していく」とし、インド太平洋の域内国との2国間あるいは多国間の親密なパートナーシップを長期にわたり、確立していく重要性を強調している。

 そのための方策として、海軍によるプレゼンスの顕示や東南アジア諸国連合(ASEAN)などへの関与を挙げた。空母派遣は、まさに「海軍によるプレゼンスの顕示」に当たる。

 クイーン・エリザベスが完成したばかりの2017年8月16日、当時のテリーザ・メイ首相は飛行甲板に立ち、乗組員を前に「この艦は、英国が今後数年間、世界を舞台に新しく前向きな任務を、自信を持って遂行する明確なシグナルとなる。私たちは完全なグローバルパワーとしてあり続けることを決断した。世界中の友好国や同盟国と協力しながら活動することになる」と演説し、英海軍の艦隊を派遣して世界秩序の安定に貢献する考えを表明した。

 演説から間もない8月31日、メイ首相は日本を訪問して当時の安倍晋三首相と会談し、日英安全保障共同宣言を発表した。日英が地球規模の戦略的パートナーシップを構築し、次の段階にまで引き上げることを約束したのである。

 まさに東方回帰。英国は第2次中東戦争での失敗や財政の悪化により、1968年に「スエズ以東からの撤退」を表明。中東やアフリカ、東南アジアに駐留していた英軍は一斉に撤収した。それが一転してインド太平洋へ回帰する。この積極性はどこから来ているのか。
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(略)