変異ウイルスが猛威をふるい、世界最悪のペースで新型コロナの感染が拡大しているインド。1日の感染者数が40万人を超える日が出るなど、外務省が日本人に一時帰国の検討を促す事態となっています。医療体制や経済活動への影響を、現地に住む日本人が明かしてくれました。

インドの首都ニューデリー。いつもは大勢の人で賑わうマーケットも閑散としています。3月中旬以降、インドでは感染拡大が止まりません。5月1日には新規感染者が40万人を超えました。ニューデリーでは今月3日までとしていたロックダウンの期限を1週間延長し、現在は食料品店や薬局などのみが営業しています。

13億人の人口を抱えるインドでは、これまでワクチン接種を行ったのは1割ほど。インド政府は感染者急増を受け、45歳以上だったワクチン接種を18歳以上にも拡大しました。

一方、インドの各地ではワクチン接種の予約システムに関するトラブルが相次いでいます。南部ではワクチン不足のため、対象を拡大できないという声もあり、またコロナ患者の病床や医療用の酸素が不足するなど、医療崩壊も起きています。

1日の感染者数が40万人を超えたインド。日本政府は滞在する日本人に一時帰国を検討するよう促している。

インド国内での感染急拡大を受け、日本の外務省は2日、インドに滞在する日本人に対し、一時帰国を検討中の場合は出国手続きを早めに進めるよう要請。検討していない場合も、一時帰国を含めて検討するように促しました。帰国するためには出国前72時間以内に実施したPCR検査の「陰性」証明書の提出が必要ですが、なかなか検査を受けられない状況です。

自動車部品メーカーの現地法人で代表を務める男性はテレビ東京の取材に対し「駐在員の安全と健康最優先に考えると、今のデリーの医療状況からすると一時帰国が望ましいと思っています。状況を見て、早い段階で何らかの判断をするつもりです」と答えました。

現在、インド国内にある3つの工場のうち一つを縮小して稼働しており「日本だけに限らず、ヨーロッパや東南アジアにも輸出をしています。今後こういう状況が続けば深刻な状況になると思います」と今後の製品供給への不安を語りました。

一方、別の男性が勤める自動車部品メーカーでは、工場の稼働を停止し、管理者以外の駐在員の一時帰国を決めました。

日本政府はアメリカの一部の州やインドからの帰国者に対して、2週間のうち3日間を指定された宿泊施設で過ごし、残りの日数を自宅で待機する水際対策を決定しています。しかし、この男性は帰国に迷いもあると明かします。

「風評被害をわれわれ帰国者が受けないためにも、しっかり隔離してほしい。羽田空港に着いたら指定する施設で2週間、一歩も出られないという状況を作ってほしい。われわれはそうした環境にもう慣れています。今でも部屋から出ていません。家族からは早く帰ってきてと言われているが、こちらにいる仲間のこともありますし、複雑な状況です」

https://news.yahoo.co.jp/articles/8d42162ba2e3b3f10ab4f706d03c1b0a4d61edb6