新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだ国では感染者が減少するなどの効果が出ている。

中東のイスラエルでは、人口の半数がワクチン接種を完了。
感染者が激減していることを受け、1年にわたる厳格なロックダウン(都市封鎖)が終わり、町には活気が戻っているという。

1月にワクチンを接種した現地在住の50代の日本人女性に、「コロナ前」の日常生活が戻りつつあるイスラエルの現状について尋ねた。

「ワクチン接種が加速してここ1カ月くらいで一気に感染者数が減りましたね」
南部にある都市、アシュケロンで暮らす女性はイスラエルの近況についてそう話した。

女性は昨年1月に2回のワクチン接種を行い、ワクチン接種済み証明「グリーンパスポート」もスマートフォンのアプリで受け取った。
すでに人口の54%にあたる500万人が新型コロナウイルスワクチンの2回の接種を終えている。

人口約900万人のイスラエルでは、これまでに80万人以上が新型コロナに感染し、6千人以上が死亡。
厳しいロックダウンやソーシャルディスタンス(社会的距離の確保)規制が昨年から続いた。

最も感染者が多かった1月は1日に1万人を超える日もあったが、ワクチン接種の加速とともに感染者も減り、4月は連日100人台と大幅に減少。
2月から規制も段階的に解除され、屋外で義務付けられていたマスク着用は、4月18日からはマスクなしで外出が可能になった。

女性は「マスクがないと空気の入り具合が全然違う。気温も高くなっているので、息苦しさや暑さがないのは快適」と話す。

海岸沿いに多くの飲食店があるイスラエルでは、昨年は暗く、閑散としていたが、いまは店の明かりがともされ、多くの人でにぎわっているという。
「ほぼ普通の生活に戻ってパブには人が鈴なりで食事している」といい、マスクなしでも利用できるオープンカフェにもたくさんの人の姿がみられたという。

オックスフォード大研究者らが各国での発表などを基に作成したデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、
イスラエルでは、ワクチン接種を1回以上受けた人の割合は62・26%と世界でも群を抜いて多い。

米は42・15%で、日本は1・64%と大幅に遅れている(4月26日時点)。

IT大国でもあるイスラエルは、グリーンパス導入のほか、入国者に対する徹底したコロナ検査や追跡体制を構築。
厳しいロックダウンや素早いワクチン接種など、多面的で徹底したコロナ対策が功を奏した。

女性は1年あまり続いたコロナ禍での感染への不安や心配から解放され、ストレスが減ったと感じている。
ただ、母国である日本のことが気がかりだ。

日本では東京や大阪で3回目の緊急事態宣言が出された。女性は4月上旬に一時帰国を予定し、航空券も予約していたが、9月に延期。
高齢の父親など家族に会いたとは思うが、日本の感染状況やワクチン接種の遅れを考えると当分は難しいと考える。

「イスラエルでは流れ作業のようにワクチン接種をやったおかげで早かった部分もある。
日本も柔軟に対応して、たくさんの人がワクチンを打てるようにしてほしい」と願っている。
https://www.sankei.com/premium/news/210506/prm2105060004-n1.html#:~:text=%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3