4月に入り、ドル高相場がピークアウトしている。対円では108円割れを臨み、対ユーロでは1.20台に復帰する地合いだ。

(略)

 とりわけワクチン接種率が高い国は行動制限解除の見通しが立ちやすく、したがって成長率見通しも金利も上がりやすいことから選好されやすいという論点も強調した。4月に入り、債券・為替市場は調整色を強めているものの、こうした視座の重要性はまったく変わっていないというのが筆者の基本認識である。

 確かに、世界的にウイルスの変異が感染拡大に繋がっている状況があり、「ワクチンさえあれば4〜6月以降の世界経済は上向き」というメインシナリオがリスクに晒されている機運はある。

 とはいえ、従前のウイルスであれ、変異したウイルスであれ、ワクチン接種こそが唯一にして最善の出口戦略なのだから、その戦略が一番上手くいっている(≒一番ワクチンの接種率が高い)経済への見通しが明るく、市中金利も高く、結果として当該通貨が買われやすいという事実は動きようがないだろう。

ワクチン接種率と経済の「リアルな関係」

 図表1に示すように、年初来の名目実効為替相場(NEER)の強弱関係は「英ポンド>ドル≧カナダドル>ユーロ>円」だが、これはワクチン接種率の序列と一致している。

 
次に、図表2を見て欲しい。

 2021年の実質GDP成長率見通しも「英国>米国>カナダ>ユーロ圏>日本」となっており、通貨の強弱関係とまったく同じだ。

 これは偶然ではない。ワクチン戦略が奏功している国は実体経済も強く、市場からも評価されているというシンプルな話と考えられる。当然そうした国の金利は相対的に高めなので通貨が買われる理由にもなる。その上で米国やカナダは産油国としての側面も評価されているのだろう。

 片や、日本にはワクチンも金利も原油もない。人口1400万人弱を誇る首都東京の医療体制が重症者47名(4月19日時点)で崩壊する(と言われている)状況では、ワクチン抜きで実体経済の浮揚を実現するのは不可能と言って差し支えないだろう。

 もちろん、何らかの理由で金融市場全体がリスク回避姿勢を強め、経常収支や対外債権など需給の厚みを評価する相場に転じれば円が再び評価される芽もある。しかし、変異種は懸念されつつ、日本以外の国ではワクチン接種が相応に進んでいる。日本だけ混乱しても市場の潮流には何の関係もない。円が評価される筋合いは今のところないように見受けられる。


(略)

https://news.yahoo.co.jp/articles/b398678fd2e8c2701bc28a2ad5c0274cb2560f0e