広島名物のお好み焼きに欠かせないソース。中でも代表的な「オタフクソース」(本社・広島市)が今春、栃木県日光市に進出した。

 なぜ日光? 東日本に広島お好み焼きが広がったのか。

 看板が新しいオタフクソース日光工場を訪れた。緑に囲まれた敷地に足を踏み入れると、スパイシーな香りが漂ってきた。工場長の吉田裕章さん(43)が案内してくれた。

 吉田さんは生粋の広島人。子ども時代からお好み焼きを食べて育った。「週末になると父が仕切って作ってくれた」

 日光工場は1991年、ペンギンマークのユニオンソースがおいしい水にひかれて同地に整備した。2005年、ユニオンソースはオタフクソースと提携して傘下に入り、今年4月1日付で吸収合併された。

社長「粉モノ文化を広める」
 オタフクソースの佐々木孝富社長(52)は「栃木は首都圏に近く重要な拠点となる。東日本でのシェア拡大につなげたい」と合併の意義を語った。ユニオンブランド商品は今後も継続していく。

 日光工場の年間生産量は約6500キロリットル。オタフク全体の約17%を占める。両ブランドでは製法が異なり、ユニオンブランドの商品は全体の4分の1ほどにとどまる。

 ただ、この工場では同じソースでもお好み焼きソースは製造していない。「お好みソースを作っている場所が広島であるというメッセージを大事にしている」と佐々木社長。「私たちはお好み焼き、粉モノ文化を広めることに情熱を傾けてきた」

 お好み焼き普及にも力を入れているオタフクは、「お好み焼士」という社内資格を設けている。資格は技術・経験・人格など会社を代表するお好み焼き専門家のマイスター(上級)、コーディネーター(中級)、インストラクター(初級)。コーディネーター資格を持つ吉田さんは「オタフクに入社したら、まずお好み焼きの作り方を研修で教わります」と笑った。

 ユニオン時代から工場見学には年間に地元の小学生ら約500人が訪れてきた。19年11月にリニューアルして解説用の展示パネルを設けてウェブ予約も開始。だが、コロナ禍が起こり、半年もたたず見学は中止となった。

コロナ禍需要増 お好み焼きソース欠品も
 工場見学では、野菜から抽出したスープ製造や味の調整、容器に詰めるまでの工程を通路から見ることができる。セージやシナモンなどの香辛料を自らひいて香りの体験も可能だ。試食コーナーでは、ソースの味を味わえるように串カツやパスタなどを出しているという。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASP5901LMP4PUUHB015.html
https://www.otafuku.co.jp/union/img/home/img07_sp.png