元請けに6割上納ノルマ、便器交換なら「最低30万円」代金請求
2021/05/13 11:12
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210513-OYT1T50095/

 トイレの水漏れなどの水回り修理を巡る高額請求トラブルで、兵庫県警が2月に摘発した事件では、神戸市内の特定の水道工事業者が、下請けに対し、代金の6割を上納させるなどのノルマを課していた疑いが強まっている。この事件で詐欺罪などで起訴された同市内の男(24)は先月の初公判でノルマに絡み、便器交換をする場合は、上納分を考慮して自らに利益が出るようにする最低額が30万円だった、と証言。捜査関係者らへの取材で、こうした仕組みの詳細も明らかになった。

兵庫県警察本部
 男は、たつの市内の女性から便器交換費用などとして30万円をだまし取ったとされ、先月23日、地裁姫路支部で行われた初公判で、この「30万円」という金額の意味を説明した。


 元請けの水道工事業者に6割を渡し、残り4割から経費を引いた取り分を仲間と分けるシステムだったといい、事件のケースで言えば、元請けに18万円、男ら数人の取り分が12万円となる。便器の調達費用は、男らが負担していた。

 この点については、捜査段階の県警の調べで、この業者が男との間で、代金の分配ルールを細かく定めていたことも判明した。

 捜査関係者らによると、業者は、便器など部品交換が不要な簡易な工事でも、1件あたり最低5万円を依頼者に請求するよう指示。こうした実態は、男らとのLINEのやりとりなどで分かったという。依頼者から5万円以上を得ることができた場合は、男ら下請けの取り分は4割だが、依頼者に拒まれるなどして下回った場合には、取り分が3割に下がる仕組みだった。

 また、下請けには、集めた工事代金が、2か月平均で1件あたり3万8000円を下回ると「解雇」されるというルールもあった。県警が任意で事情を聞いた業者の関係者は、男について「ノルマを達成できず、成績不振を理由にクビを切られた」と供述。男は法廷で、「だまして金を取るのは心苦しかった。被害者に申し訳ないことをした」と謝罪の言葉を述べた。

 兵庫県の「悪質水道工事被害対策弁護団」によると、悪質業者は「マグネット型広告」や、インターネット検索で自社サイトを上位に表示させる手法などを利用して客を集めるケースが多い。弁護団は、水回りのトラブルで困った時には、自治体が公表している「指定工事店」に相談するよう呼びかけており、各地の水道工事業者の組合は、地元の指定工事店を紹介している。