「前立腺がん」30年で17倍に激増 「肥大症」放置で人工透析のリスクも
5/15(土) 5:56配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/776945952ae242c0c3db9108fd806e5daed802f0

 がんの部位別罹患数、男性の1位は前立腺だ。その数は驚くべき勢いで増え続けてきた。肥大症も含め、加齢とともに誰もが直面する前立腺の問題は、甘く見ると健康に深刻な打撃を与えかねない。病にどう向き合うべきか、最新の治療法は? 知っておいて損はない。

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 各種の調査統計によると、「前立腺がん」の罹患数は増加の一途を辿っている。

 その勢いたるや「激増」という表現を使っても差し支えないくらいだ。

 少し前の資料だが、「がん・統計白書 2012」のデータを見ると、1982年にはその数、4362人。これが10年経った92年には倍の9855人に。さらに10年後の2002年に2万9345人を数え、12年にはじつに7万3145人と、30年間で約17倍にも増えている。

 国立がん研究センターが20年に公表した、17年のがん罹患者の数字でも、男性における部位別の1位は前立腺、2位は胃、3位は大腸。以下、肺、肝臓と続く。“堂々のトップ”なのである(女性は1位から乳房、大腸、肺、胃、子宮の順)。

 前立腺は男性の膀胱のすぐ下にあり、尿道の付け根部分を取り巻いている。重さは約20グラム。栗の実に似た形で、真ん中を尿道が通る。生殖上、一定の重要な役割を果たすのは知られたところだが、生殖機能が衰えはじめる40代あたりからさまざまなトラブルを来すこともまた、広く認知されている。

 そのひとつが前立腺がん。

 では、なぜこれが急増しているのか。東京慈恵会医科大学(東京都港区)の三木健太・泌尿器科診療副部長によると、

「理由は、大きく分けて三つ。まずは急速な高齢化、次に動物性脂肪の摂取増など食生活の欧米化、さらに腫瘍マーカーの血液検査、いわゆる『PSA検査』の一般化、この3点が挙げられるでしょう」

 長く生きれば、悪性腫瘍の発現可能性も高まる。超高齢社会で検査数を増やせば、罹患者の把握数も増える、という理屈だ。

 それなりによく耳にする話とはいえ、聴くほどに恐れをなす人も多かろう。

 だが、三木氏が続けるには、

「部位別死亡者数、すなわち死因となったがんとしては、男性は上から肺、胃、大腸、すい臓、肝臓で、前立腺はこれらに次ぐ6位と順位は低い。他にこんなデータもあります。前立腺がん以外の理由で亡くなった80歳以上の男性の解剖所見では、半数以上に前立腺がんがあったという報告です。その人たちは前立腺がんを患っていても、命に別状はなかったと言っていいわけです」

 なるほど、前立腺がんを即、身体に対する重大脅威と過大に捉えるべきではないようで、

「がんは早期発見・早期治療が大事なのは確かですが、前立腺がんは必ずしも早期治療に移行するのがベストとは限りません。進行が遅いため、うまく付き合えば無用な手術や治療をせずに済むことが少なくないのです」(同)

 前立腺がんが60歳で見つかり、その後20年も監視療法を続けて何ら問題なかった人もいるという。

 もちろん、だからといって油断はならない。

「前立腺がんは自覚症状が出にくいので、身体の異変に気付いたときにはかなりがんが進行していたり、行うべき治療の選択肢が限られてしまっていたりします。骨やリンパ節に転移して痛みが生じ、検査を受けたらステージ4だった、なんていうことも」

 ゆえに現場ではより有効な治療法が日々模索されているわけだが、目下、最新のものと位置づけられるのが三木氏の専門とする「凍結療法」である。

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