新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐる米疾病対策センター(CDC)の指針変更が話題を呼んでいる。

接種完了から2週間以上たった人は、屋内外を問わずマスク着用や対人距離の確保は原則不要とするというのだ。ワクチン接種が進み、感染者や死者の減少傾向が続く米国ならではの“脱マスク”戦略ともいえるが、専門家は「医学的によいとはいえない」と指摘する。

 ジョー・バイデン大統領は13日の演説で「接種するか、マスクを着け続けるかだ。元の生活に戻り、互いの笑顔を見よう」と述べ、重ねて接種を呼び掛けた。

 米国では2回接種が必要なファイザー、モデルナ、1回で済むジョンソン・エンド・ジョンソンの3種類のワクチンが実用化された。CDCによると、13日時点で必要な回数の接種を終えた人は人口の約36%に当たる約1億1900万人。少なくとも1回接種したのは約47%に上り、ファイザー製ワクチンの12〜15歳への接種も始まった。

 CDCは最近の研究から、接種完了から2週間以上経た人が感染したり、人にうつしたりする可能性は低いと評価。米国で実用化されたワクチンは変異株にも効果があり、マスク着用は基本的に必要ないと判断した。

 懐疑的な見方もある。東北大災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は「医学的に正しいかといわれたら、明らかによくない。街中ですれ違ったマスクをしていない人に接種証明を見せてくれとはいえないし、インフルエンザなど新型コロナと区別がつきにくい感染症が流行すれば、やはり医療機関を逼迫(ひっぱく)することになる」と指摘する。

 それでも脱マスクに踏み切った米国の方針について児玉氏は「ワクチン接種率が停滞しつつあるなか、コロナでの犠牲や他の感染症が広がったとしても、ワクチン接種率を上げることと引き換えにマスクを外してもよいという結論に達したのではないか。医療者として支持はできないが、政治的には妥当な判断ともいえるかもしれない」とみる。

 CDCも公共交通機関の利用時や、連邦政府や州などが規則を定めている場合にはマスク着用を求めている。

 段階的にワクチン接種が行われている日本も米国の方針に続くのか。「日本も今後、若い世代で接種率が停滞した場合、米国の策が成功していれば同じ選択をする可能性はある。高齢者や基礎疾患を持つ人の多くがワクチンを接種していて、感染者が減っていることが条件になるだろう」と児玉氏は話した。

2021年5月15日 17時11分 ザクザク
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