ゾフィー・ショル(1921〜43)。第2次大戦中、ナチス批判や反戦を訴えて処刑された女性が、生誕100年を機にドイツで再評価されている。英雄として神格化するようなブームの一方、21歳の彼女が残した等身大のメッセージは何だったのか、静かに問い直す人々もいる。(ダッハウ〈ドイツ南部〉=野島淳)

■反戦と自由、貫いた「英雄」

 ゾフィーは、大学生らが反ナチスのビラを各地に配った抵抗運動「白バラ」の一員だった。1943年2月、兄ハンスとミュンヘン大学でビラをまいたところを職員に見つかり、逮捕された。4日後に反逆罪で死刑判決を受け即日、兄らとともに斬首された。

 ゾフィーの100回目の誕生日の5月9日、ミュンヘン近郊ダッハウにあるナチスの強制収容所跡地に立つ教会で、記念の催しがあった。

 「彼女が自身と他者を幸せにした理由や方法について考えたい」。ビョルン・メンジング牧師が語りかけると、モナ・ウィルトさん(14)はゾフィーが残した手紙の一節などを読み上げた後、演説した。

 「ゾフィーは命を危険にさらしても不正に立ち向かい、ナチスの犯罪を公にする勇気を持っていた。私たちはいま、自分の意見を公然と言える国に住んでいる。白バラの目標は現実のものになった」

 ゾフィーの勇気を見習いたいというウィルトさんは取材に「国籍や宗教にかかわらず、誰もが平等に扱われるべきだ。友人が人種の違いで傷つけられたら、私は抗議する」と話した。

 白バラの一員で処刑されたクルト・フーバー教授の孫シュテファン・ワイスさん(63)も会場に足を運んだ。「差別などの問題に関心を持ち、行動を起こせる勇気ある人が必要だ。白バラは今でも模範となる役割を持っている」

 ゾフィーは白バラの中心人物ではなかった。だが、取り調べや裁判で厳然とした態度で信念を貫く姿が書籍や映画で、繰り返し取りあげられてきた。多くの市民がナチスに熱狂したなかでも、現実を冷静に見つめ、反戦と自由を訴えたゾフィーらがいたことは、戦後を生きるドイツの人たちの救いだったといえる。

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2021年5月16日 10時15分