妻から頼みごとをされたとき、夫が「あるひと言」を付け足すことで、怒りを買ってしまうことがある。家事研究家の佐光紀子さんは「『あとでやるよ』などの曖昧な答え方をする人がいる。職場でそんな答え方をするかを考えてみてほしい」という――。(第3回/全3回)

■なぜ妻は「あとで」「ちょっと待って」にキレるのか

 「妻に家事を頼まれたときに、「あとでやる」とか「ちょっと待って」って言うと、妻はキレだすんですよ。僕は、やらないとは言っていません。あとでちゃんとやるからちょっと待ってと言っているのに、どうして妻はキレるんでしょう?  キレる妻にどう対処したらいいですか? 」

 以前、夫婦参加型の家事シェア講座のフリートークで、30代と思しき男性からこんな質問が出た。

 「ある、ある」という共感が男性陣側から伝わってくる。一方で、思わず、「何言っているのよ」と言わんばかりのムっとした顔になる女性陣。それぞれの言い分がヒシヒシと伝わってくる、一瞬、部屋に緊張を走らせた質問だった。

 確かに彼は「やらないとは言っていない」。いや、「やる」と言っている。だから、「少し待てよ」という気持ちはわからなくはない。しかし、彼の言う「あとで」や「ちょっと待って」の「ちょっと」というのは、一体どれくらいなのだろうか。

 5分後なのか、30分後なのか。あるいは「風呂に入って、夕飯を食べて、TVを観た後」なのか。それが「あとで」や「ちょっと」という言葉からは伝わってこない。実はそこに大きな問題がある。

■「あとでやる」では答えになっていない

 これが、仕事の現場でのやりとりだったら、どうだろうか。自分が仕事を頼む側だったとしよう。

 「得意先に電話をかけてアポイントメントをとっておいてほしい」と頼んだら、後輩が「あとでやります」と答えたとする。頼んだ側はどう思うだろうか?  「すぐにやってくれそうだ」と感じるだろうか?  むしろ、「そのあとっていうの、いつだよ」とは思わないだろうか? 

 それが、スマホを見ながら、顔も上げずに「ちょっと待ってください」と言われた日には、「お前やる気あるの? 」とさえ思うのではないか。もしかしたら、「じゃあ、いい。こっちでやるから」と引き取ってしまった方が早いかもしれない、という思いが頭をかすめることもあるだろう。

 いずれにせよ、「あとで」という言葉には、「すぐにやってくれるだろう」「ちゃんとやってくれそうだ」とは思えない、「やります」を先送りしているだけという印象が拭えない。ましてや、「あとで」と言いながら、目の前で後輩が延々とスマホをいじり続けたら……「いつになったらやるんだよ」とイライラする自分の姿も、想像に難くない。

 では、一体後輩がどう答えれば、「やってくれそうだ」と思えるだろう。

 「電話一本かけたらやります」「○○が終わってからでもいいですか? 」「今から出なくちゃいけないので、明日でも間に合いますか? 」といった返事だったらどうだろう。相手の状況と、明確なお尻が見える返答があれば、頼んだ側は納得する。たとえ、それが「今すぐやります」ではなく、もしかしたら、今日はできない、という返事であったとしても。



5/17(月) 11:16
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