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大分県の公立中の男子生徒から「体育祭の得点の算出法がおかしい」という意見が届いた。
競技だけでなく、日頃の肌着の色まで影響するのだという。競技結果と服装や生活態度は関係ないはずだが、なぜ結び付けられているのか。
新型コロナウイルスの影響で開催に制限が出ているものの、5月は春の運動会シーズン。西日本新聞「あなたの特命取材班」が調べた。

男子生徒は昨年、話したことがない女子生徒から「もしかして、下着が白じゃないんじゃない?」と聞かれた。
確かに薄い水色だったが、制服のシャツの下にわずかに透ける程度で「凝視しなければ気付かないのに」と気味が悪くなった。

この中学では体育祭の10日ほど前から、性別を問わず、白以外の肌着を着ていないか、同じチームの生徒同士でチェックし合う。
校則には肌着の色に関する記述はないが、「体育祭ルール」の違反者の人数は毎日、校内放送で発表された。

体育祭当日、各チームの持ち点は違反者の人数に従って数点ずつ引かれていた。ただ、競技結果の加点が大きいため、
勝敗にはほとんど影響しない。それでも、多くの生徒がお互いの肌着の色に目を凝らす。

男子生徒は「他の生徒から監視されているようで嫌だった」。母親は「下着の色と体育祭の勝敗がなぜ結び付くのか。
意図が分からない」といぶかる。

教頭は取材に「いつからか分からないが、生徒会が決めてやっている」と強調。チームをまとめる目的に加え、
本番だけで勝敗が決まるのを避ける狙いがあるという。ただ、違反者をとがめるような言動が見られたときは
「ブレーキをかける必要はある」と付け加えた。

他の自治体を調べると、福岡県でも複数の公立中で似たようなルールがあった。ある中学では体育祭の練習が始まる時期から、
放課後の教室の戸締まりを徹底したり、忘れ物をしなかったりすれば、チームに加点される。

同校では、異学年でつくったチームでダンスを披露するが、その完成度の向上に3年生のリーダーシップや学年間の協力が欠かせない。
校長は、事前の加点は結束力を高めるのに有効として「日々の練習を大切にする意識付けの一つ」と説明する。

中央大の池田賢市教授(教育学)は「コロナ禍の『自粛警察』のように、お互いを監視する目を育てている。
団結どころか、相互不信を募らせる関係になってしまう」と警鐘を鳴らす。生徒会の自主的な行動であったとしても
「教員の価値観を代弁しているにすぎない。教員に評価されるため、生徒がより厳格な校則を求める例はよくある」と話す。

福岡県内の別の中学では、体育祭前に教室の戸締まりの不備や忘れ物があると減点される。2年の女子生徒はため息をつく。
「忘れ物をした生徒は地味に居場所がなくなる。厳しい視線にさらされて、まるで“公開処刑”みたい」