カリフォルニア大学ロサンゼルス校で自然人類学を研究するサーシャ・ウィンクラー氏が動物の笑いについて研究しようと考えたのは、アカゲザルを研究していたことがきっかけ。アカゲザルについて調査する中で、ウィンクラー氏はアカゲザルが遊んでいる間はわずかにあえぐことに気がつきました。この発見からウィンクラー氏は「遊んでいる間に音を立てる動物」について過去の文献を調査し、霊長類や鳥類など65種が何らかの形の笑い声を上げると特定しました。

論文に掲載されたリストを見ると、65種の大半はチンパンジー・ボノボのような大型類人猿や、ニホンザルなどのオナガザル科(旧世界ザル)の霊長類ですが、犬やネコ、牛などの家畜や、デグーのような齧歯類やアシカ、ミヤマオウムも含まれています。リストには、これらの種名に加えて、笑い声を上げるという論拠になった論文も明記されており、論文中には犬が仲間と遊ぶ前に示す「お辞儀をする」「息を荒げる」というサインのように、笑い声以外の「遊びのサイン」についても言及が存在します。

ウィンクラー氏によると、こうした動物は笑い声を遊びの開始合図だけでなく、「攻撃してはいない」という意思表示にも用いるとのこと。例えば「首にかみつく」という行為は戦闘時にもじゃれつきの中にも見られますが、笑い声を上げながら首にかみつくことで「これは単なる遊びで、本気で噛もうとしているわけではない」というサインを送っているとウィンクラー氏は解説しています。

こうした動物の示す笑いについて、ウィンクラー氏は「霊長類以外はほとんど研究が存在せず、魚・両生類・は虫類については遊ぶとすら思われていない」と指摘。特定の動物種を研究する中で「笑い」について言及する記述は存在したものの、「笑う動物」という観点から調査を行った包括的な研究は存在しなかったと語りました。

また、ウィンクラー氏は人類の笑い声が動物の笑い声と異なる点について、「声量が大きい」と語っています。動物における笑い声は基本的に相手に聞こえる程度の声量しかないそうで、人類のように他者に聞こえるほどの声量を出すことはほとんどないとのことで、ウィンクラー氏は「声量が大きいという点は人類の笑い声におけるユニークなポイントで、将来の研究にとって重要な領域になると考えられる」とコメントしています。
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