【ジュネーブ=杉野謙太郎】世界保健機関(WHO)の年次総会が24日、オンライン形式で始まった。テドロス・アダノム事務局長は演説で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で、「世界は依然として非常に危険な状態にある」と述べ、一部の先進国にワクチンが集中している現状の是正を訴えた。

 テドロス氏は、今年の感染者が既に昨年1年間の合計を上回っており、死者数も今後3週間のうちに昨年1年間を超えるだろうと指摘した。世界のワクチン接種の75%が、わずか10か国に集中している点を挙げ、「恥ずべき不公平だ。ワクチンを手にした少数の国々が、世界のその他の命運を左右している」と批判した。

 これまで接種されたワクチンを合わせれば、世界の医療従事者や高齢者に接種するのに十分な量だったとし、「公平に分配されていれば、我々はもっとよい状況にいられたはずだ」とも語った。

 テドロス氏は今年9月までにすべての国で人口の少なくとも10%、年末までに30%にワクチン接種を済ませる目標を掲げ、加盟国にはワクチン分配の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」への提供を、製造者にはワクチン増産を求めた。演説中、医療従事者をたたえるため参加者に拍手を求め、約30秒間にわたって手をたたく場面もあった。

 フランスのマクロン大統領は総会にビデオメッセージを寄せ、感染症発生時にWHOの調査権限を強めるよう訴えた。ドイツのメルケル首相も、「WHOは引き続き、世界の保健に主導的な役割を果たすべきだ」と述べ、今後の大流行に対処するパンデミック条約採択を支持した。

 総会は6月1日までで、これまでの新型コロナ対応の検証や、WHOの機能強化について議論する。

讀賣新聞 2021/05/24 22:03
https://www.yomiuri.co.jp/world/20210524-OYT1T50187/