文春オンライン5.26
https://bunshun.jp/articles/-/45704

 厚生労働省が昨年12月に公募した医療用ガウンの製作をめぐり、「日本国内縫製品に限る」との条件に反し、中国縫製品が納入されたとの告発が厚労省になされ、同省が聞き取りを開始したことが「週刊文春」の取材でわかった。

 ガウンを公募したのは厚労省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部物資班。

「医療機関への無償配布や、備蓄をするために募集しました。コロナ関係の医療現場やワクチン接種にも使われる予定です」(厚労省)

 厚労省と契約を結んだ20社のうち、2番目の17億3,800万円分を契約したのが、防災用品専門会社の「船山」(新潟県)。同社は東京のアパレル会社、ニューズ・トレーディング(以下NT社)に製作を丸々発注した。しかし、

「NTは船山に納品した200万枚のうち、36万枚を中国のA社に縫製させたのです」

 A社のエージェントを務めるX氏は、そう証言する。

 NT社の社長は1月16日、A社の担当者に送ったメールで“厚労省案件”であることを強調している。

〈先に40万枚分の裁断パーツを船積してください。次に30万枚の縫製ガウンを船積してください(略) ※日本国(厚生労働省)の案件なので、絶対に失敗は出来ません〉

「週刊文春」の取材に対し、A社の担当者は「厚労省案件と言われていたので、そう思って作りました。日本縫製限定とはNTさんから聞いてません」と答えた。

 NT社に発注した船山はどうか。同社社長が言う。「(中国縫製品は)ないと思いますよ。NTさんを信用するしかない。NTの社長が(製造元などを記した)仕様書を決めた。もし中国縫製なら契約違反でしょ」

NT社社長に話を聞くと……
 そして、NT社社長は、A社から縫製品を購入したことを認めた上で、

「(縫製品)36万枚のうち、手元に数万枚、検品しているガウンがあって、二十数万枚は他の会社に販売していると思います」

 と、中国縫製品を船山に納入したことを否定。メールに「厚労省案件」と書いたことについては、「メールに残っているのだったら、メールは事実なんでしょう。きちんと調べて連絡します」と2日後の回答を約束。だが2日後、「来月くらいに報告書を作り、船山さんに見せます。その後、船山さんの許可を得た上でお見せしますよ」と前言を翻した。

 改めてNT社社長に質問書を送ったところ、A社の納入したガウンのうち、国内の会社に出荷したのは、当初の“二十数万枚”という回答から“7万2000枚”に数量を変更。A社へのメールは〈不良等問題の発生を防ぐ注意喚起を強調する為の強い文言にしています〉とした。

 行政問題に詳しい渡邉アーク総合法律事務所の渡邉正昭弁護士が解説する。

「もし船山が契約条件と異なる製品を厚労省に納品していた場合、詐欺罪に該当する可能性があります。不正競争防止法にも抵触する可能性があり、その場合、NTは共犯となり得る。船山がこの不正を知らなかった場合はNTに対して損害賠償請求ができ、詐欺罪で告訴することも可能です」

 X氏はこの件を厚労省に告発。同省はそれを受け、5月25日、X氏から聞き取りを開始。また同省には船山からも相談が入った。

 厚労省が縫製を日本に限定したのは、確実な供給を重んじたため。果たして公募条件に違反がなかったかどうか、同省の調査が待たれる。

 NT社社長とA社との具体的なやりとりやX氏の証言など、詳しくは5月26日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び5月27日(木)発売の「週刊文春」が報じている。

「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年6月3日号

【画像】NT社がA社に送ったガウンのクレーム写真
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