https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210604/k10013067031000.html
天安門事件から32年 党や政府への批判 徹底して抑え込み

中国の北京で民主化を求める学生らの運動が武力で鎮圧され、大勢の死傷者が出た天安門事件から4日で32年となります。事件の見直しや責任を問う声は封じ込められ、中国共産党の創立100年を来月に控える中、党や政府への批判は徹底して抑え込まれています。

32年前の1989年6月4日に起きた天安門事件では、民主化を求めて北京の天安門広場やその周辺に集まっていた学生や市民に対し、軍が発砲するなどして鎮圧し、大勢の死傷者が出ました。

中国政府は当時の対応は正しかったとする立場を変えておらず、徹底した情報統制のもと事件を公に語ることは今もタブー視されています。

4日朝の天安門広場では、多くの観光客の姿が見られましたが、周辺には大勢の警察官が配置され、広場に向かう人に職務質問をしたり、手荷物を検査したりしていました。

一国二制度のもと言論や集会の自由が認められてきた香港では毎年この日に合わせて市民団体が主催する大規模な追悼集会が開かれてきましたが、去年に続きことしも新型コロナウイルスの感染防止を理由に警察が開催を許可しませんでした。

中国では、事件の見直しや責任を問う声は封じ込められ、中国共産党の創立100年を来月に控える中、党や政府への批判は徹底して抑え込まれています。

米国務長官「真相究明 求め続ける」

アメリカのブリンケン国務長官は天安門事件から32年となったのに合わせて声明を発表しました。

このなかでブリンケン長官は「人々は人権の尊重を求めただけなのに中国政府は暴力で応じた。6月4日に肩を並べて立ち向かった人々は勇敢だった。だからこそわれわれは犠牲になった人や拘束された人、行方不明になった人たちのことを含め、あの日に何が起きたのか完全に明らかにするよう求めることを決してやめてはならない」として、中国を非難し、真相究明を求め続けると強調しました。

またブリンケン長官は、香港で行われてきた追悼集会の開催を当局が認めなかったことについて「天安門での民主化運動は民主主義や自由を求める香港の闘いにつながっている」と指摘しました。

そのうえで「アメリカは、中国の人たちが中国政府に普遍的な人権の尊重を求めるのを支え続ける。32年前に殺害された人たちと、今も中国政府の抑圧に対抗し続ける勇敢な活動家たちに敬意を表す」として、アメリカとして中国の民主活動家などへの支援を続けると強調しました。

バイデン政権が天安門事件について声明を出すのは今回が初めてですが、これまでの政権と同様に中国を厳しく非難する内容となりました。

加藤官房長官「今も誠に遺憾と受け止め」

加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「日本政府としては、事件発生直後に発出した官房長官談話で示しているとおり、軍の実力行使による衝突の結果、多くの人命が失われるという痛ましい事態に至ったことは誠に遺憾と言わざるをえないと今でも受け止めている」と述べました。

そのうえで「自由、基本的人権の尊重、法の支配は、国際社会における普遍的な価値で、中国においても保障されることが重要だと考えており、一貫して中国政府に直接伝達してきている。中国の人権状況に関する懸念も表明しており、引き続き国際社会と緊密に連携し、中国側にも強く働きかけをしていきたい」と述べました。

2021年6月4日 11時47分
NHK