東京五輪・パラリンピックの開催判断を巡り、菅義偉首相の頑な姿勢が目立っている。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会から意見を聞くべきとの記者や国会議員の質問が相次いでいるが言及を避け続けている。

 一方、分科会の尾身茂会長は4日の厚労委員会でリスク評価を提言する考えを強調した。

 京都新聞社は5月28日の首相会見後に官邸が受け付けた文書質問で、「国民が信頼を置いている分科会から意見を聞くことは、国民の不安を取り除くという意味でも大切なプロセスであり、五輪・パラ開催にかかる議論をどこかのタイミングで分科会にお願いするつもりはあるか」と問うた。

 今月4日にあった回答は、具体的な感染対策として来日する大会関係者の人数の絞り込み▽選手や関係者へのワクチン接種▽関係者の行動を管理し一般国民との接触を防止-の3点を挙げた。

 その上で「専門的な立場も交えて議論を重ねてきている」とし、昨年9月から開催する東京都、大会組織委員会、各省庁の「調整会議」に感染症の専門家2人がアドバイザーとして毎回参加し、意見をうかがっていると記していた。

 今月1日の参院厚生労働委員会では、共産党の倉林明子議員(京都選挙区)が「総理、この国の今の感染状況を一番つかんで、どこに問題があるのか。その材料を持っているのは専門家会議であり分科会。判断を仰ぐか、イエスかノーで答えて」と迫った。

 だが、首相は京都新聞社に対する回答と全く同じ内容の答弁書を読み上げ「引き続き透明性を持った丁寧な議論を進めていきたい」とだけ付け加え、質問に明確に答えなかった。

 尾身氏は5月28日の衆院厚労委で、立憲民主党の山井和則議員(比例近畿)から開催可否を分科会で議論すべきと問われ「政府から求められれば」と答えていた。今月4日の衆院厚労委で山井氏から再び見解を聞かれ「分科会に正式な要請はない」としながら「何らかの形で私どもの考えを表明する」と踏み込み、感染症や公衆衛生の観点から大会期間中の医療負荷を見極める必要性を訴えた。

 五輪中止・延期の立場を取る山井氏は取材に「コロナ対策で首相は口を開けば『専門家に聞いて判断する』と言いながら今回は分科会に聞こうとしない。手続き上、瑕疵(かし)があり、このままでは国民の納得と信頼を得られない」と批判する。

 首相の問答がかみ合わないとの指摘について、加藤勝信官房長官は4日午後の会見で「どう受け取っていただくかは受け取り側のお考えだと思う。文書だけでなく、野党からもこうした指摘を受け取ることもあるが、総理の立場に立ってできる限りの回答はしている」と話した。

6/4(金) 19:31
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