飲むだけではない日本茶の新しい楽しみ方を広めたい―。コロナ禍で日本茶の需要が落ち込む中、茶葉を詰める袋の製造販売を手がける「吉村」(東京都品川区)は、お茶を入れる過程も「味わう」オリジナル茶器を開発した。


◆水滴の音と色の変化を
 ポタ、ポタ…。コーヒードリッパーのように、茶葉を入れたフィルターが上部に付いたガラス容器に湯を注ぐと、日本茶の水滴が容器の底に落ちていく。1分ほどで容器は緑色の日本茶でいっぱいに。橋本久美子社長(61)は「お茶を入れて待つ間も水滴の音と色の変化を楽しめます」と話す。
 オリジナル茶器は日本茶の新たな需要を掘り起こそうと、社員3人が企画。2年間で約500回の試作を経て、昨年10月に完成させた。容器は耐熱ガラスを使う。フィルターは、陶磁器の産地で有名な長崎県波佐見はさみ町の焼き物だ。土でできた焼き物には吸水性があり、茶葉の余分な渋味を吸着するともいわれ、日本茶の味を「まろやか」(同社)にするという。
◆コロナ禍の需要減に対応
 コロナ禍の自粛で、葬儀の香典返しに使われる日本茶の需要が減った。危機感を抱いた橋本社長は、オリジナル茶器に需要があるか調べるためインターネット上で販売。23日間で約800人が購入した。販売実績を取引先に示したことで、当初ゼロだった取扱店は約130軒になった。自社サイトでも6050円で販売している。
 購入者からは「お茶をつくる過程が楽しい」「オンとオフの切り替えに良い」と好評だ。橋本社長は「在宅勤務で高まった健康志向も追い風になった。さらに市場を切り開きたい」と意気込む。(大島宏一郎)

東京新聞 2021年6月6日 05時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/108099