「ワクチンは殺人兵器」「トランプ氏が世界を救う」母親を奪った陰謀論。息子の語った後悔とは

新型コロナウイルスやワクチンなどをめぐり注目されるようになった、誤情報が大量に広がる「インフォデミック」という現象。アメリカ大統領選をめぐっては、そうした情報の震源となっている「Qアノン」をもじり、日本で「Jアノン」という言葉が生まれるなど、世界中で問題視されている。なかには近しい人が根拠が乏しい「陰謀論」にのめり込み、その間柄に亀裂が生まれてしまったという事例も。当事者はどのような思いでいるのか。「母親を陰謀論で失った」というタイトルのnoteを記した男性に、話を聞いた。【BuzzFeed Japan/籏智 広太】

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「そんな母が変なことを言っているな、と思うようになったのは昨年の夏ぐらいでした。LINEがうざくなったんです。何を言ってるんだろう、という気持ちでした」

「大統領選をめぐり、トランプ氏に関連する話をよくするようになったんです。対抗馬に決まったバイデン氏の批判も混ざるようになって……。中国からお金をもらっているだとか、小児性愛者だとか。合わせて増えたのが、コロナを理由にした中国バッシングでした」

「コロナについても、政府の発表が隠蔽されており、実態と異なるというようになりました。それまで語ることのなかった、日本における在日コリアンの権利をめぐる話をするようにも」

その発言は、徐々に加熱していく。「中国の支配下から私たちを救えるのはトランプだけ」「コロナを世界中に広げた中国に復讐をする」。

メディアに対して「ジャーナリズムはコピペ」などと評し、不信感を抱くように。見ている世界が違う、そう感じることも増えた。

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少し経ってから、母親のSNSを覗いてみた。

大統領選をめぐる話も落ち着き、目が覚めているのではないか、という希望があったからだ。

しかし、そこには依然として「不正選挙」に関連する言説が多く並んでいた。そして新たに加わっていたのが、「反ワクチン」に関するものだった。

根拠なしにワクチンは危険であると主張するファイザーの「副社長」(Vice president)の発言、効果を否定し不安をあおる医師、マスクを否定し「コロナは風邪」とする政治活動家の主張ーー。

なかには「ワクチンは殺人兵器」とするような、荒唐無稽ともいえるものもあった。

「僕は、心のどこかで『時が解決してくれる』と希望を持っていたんです。でも、悪化しているんじゃないかとすら、思った。母は、沼にはまり込んでしまったのかもしれません」

自分なりに、陰謀論についても勉強するようになった。そうした情報を流すことで収益を得たり、自らの政治的主張をアピールしたりしている人がいることも知った。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/2ad7b75dce6f12b5e43cc210e3bc5570a5e79a7a