インド洋に浮かぶ島国のセーシェルでは、人口の7割以上がワクチン接種を終えているというのに、コロナの感染者数が大幅に増加している。

セーシェル政府によると、5月第1週に感染が確認された人のうち1/3以上がワクチン接種を終えていたが、
その大半が中国のシノファーム製のワクチンを打っていたという。

モルジブ、バーレン、チリ、ウルグアイなどのワクチン接種率も5割を超えているが、やはり同様の現象が起こっている。
特にモルジブやバーレンでは、人口10万人あたりの死者数がインドを上回る状況となっている。

そして、これらの国々でも、ワクチン接種を終えた人たちの中でシノファーム製のワクチンの利用率が高いことがわかっている。

中国でも当然ながら、シノファーム製を中心としたワクチン接種が進んでいる。
人口がおよそ1億人の広東省は、ワクチン接種が5000万回を超え、中国全土の中でもワクチン接種率はかなり高い方だ。
だが皮肉にも、この広東省でも感染が拡大している。

深圳市では感染リスク低減のため、工場労働者に週末も工場内の宿泊施設にとどまるよう指示が出された。
広州市の中心部では再びロックダウン措置が発動された。

ここで興味深いのは、広州市で、ロックダウンと同時に、なぜかワクチン接種が停止になったことだ。
公式には、人々の間でワクチン接種人気が非常に高まっていることから過密になる事態を避ける必要があることと、
医療資源をPCR検査に集中させるためだとしているが、これを頭から信じることはできない。

一方で、同じ中国企業のカンシノバイオ社製のアデノウイルスベクターワクチンが広州市に運び込まれたことが報じられた。
上記の理由でワクチン接種の停止を決めたならば、新しいワクチンをわざわざ運び込むというのもおかしな話である。

この状況を整合性を考えて判断すると、シノファーム製のワクチンでは感染防止効果が期待できなくなり、
こちらの利用を一旦停止させながら、今後は新たにカンシノバイオ製のものに置き換える方針なのではないだろうか。

中国疾病対策予防センター(CCDC)の高福主任も「既存ワクチンの有効率が低いという問題の解決策を検討する」必要があると述べ、
シノファーム製をはじめとする中国製ワクチンの有効性の低さを示唆した。

高主任はmRNAワクチンの存在を無視するべきでないと述べながら、
問題の解決策の一つとして、異なる技術を用いたワクチンを交互に接種することを挙げた。

これはシノファーム製のワクチンの効力が低いことを、モデルナやファイザーなどの高い有効性を示すmRNAワクチンと
「併用」することでごまかす必要があると考えているようにも見える。

シノファーム製のワクチンの有効性を、中国政府の内部ですら否定する流れになっていることが窺える。

シノファームは2種類の不活化ワクチンを製造しており、医学雑誌JAMAに先ごろ発表された結果によると、その有効率は72.8%と78.1%だとされている。
ファイザー製などと比べると見劣りするとはいえ、かなり高い有効性を示していることになるが、果たしてこれは本当のデータなのだろうか。

セーシェルなどでその有効性からは信じられない事態が進行していること、広州市が接種の停止に踏み切ったことなどから見ても、
とてもそのまま受け取ることはできない。

チリ大学が発表した研究結果によると、チリで使われたシノファーム製ワクチンは、1回目の接種を受けてから2回目を受けるまでの間の有効性はわずか3%だった。

2回目の接種から2週間後の有効性は56.5%だとされているから、2回目の接種を終えればそれなりの有効性は発揮するとは言えそうだが、
それでもやはりシノファームが公式に発表している数字とはかなり大きな開きがあることになる。

もしも人命に直結する医学データにおいて大規模な改ざんを実施して中国製ワクチンを世界中に広げているのだとしたら、
とても許されるものではない。そしてその可能性に世界は薄々気付き始めているとも言える。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83995?imp=0