シリアでは、アメリカによる制裁などによって、通貨の価値が暴落。
内戦前に比べ、シリアポンドの価値は、ドルに対して50分の1以下となっています。

ここ1年ほどは、経済的なつながりが深い隣国レバノンの経済危機も影響し、通貨安と物価高がさらに進行、市民の暮らしを直撃しています。

政府が運営するパンの販売所では朝から行列ができ、市場の10分の1以下で買えるパンを買い求めていました。
日本円に換算すると2枚で1円ほどですが、それでも値上がりしているといいます。
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市内の市場では「ここ数か月、肉類は口にしていない」とか「すべての値段が高すぎて生活していけない」といった買い物客の声が聞かれました。
多くの市民は、パンや砂糖、ガソリンなどといった必需品を、政府の補助金による割り当てでしのいでいました。


郊外に足を運ぶと、状況はさらに深刻でした。

ダマスカス中心部から車で南に10分ほどの場所にある、タダモン地区。ISが支配し、3年前に激しい戦闘の末、政権側が奪還した地域です。
銃撃戦で壁には無数の穴が開き、建物の多くは破壊され、むき出しとなったコンクリート片をさらしています。電気や水道もまだ通っていませんでした。
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一方、アサド政権から住む場所を追われた多くの難民や避難民にとって、今回の選挙は到底、受け入れられるものではありませんでした。
選挙は、反政府勢力の支配地域では行われず、在外投票に参加する難民も一部に限られました。レバノンにあるシリア難民のキャンプでは、選挙は無意味だという声が多く聞かれました。
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シリア西部から8年前に家族とともにレバノンに逃れてきたフダ・ハティーブさん(51)も、選挙は“茶番”であり、アサド政権が続くことは耐えられないと訴える1人です。
夫のアリさんは、10年前、民主化デモに参加したのを情報機関に見つかり、銃殺されました。
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翌年には、徴兵されていた長男のフセインさんが、デモを弾圧する軍から逃れて故郷に戻ったところ、フダさんの目の前で、やはり銃殺されました。
自宅も政権側の空爆で破壊され、三男のハッサンさんは左腕に大けがを負いました。

生き残った家族でレバノンに逃れ、いまは、孫たちも含め8人でテントで暮らしています。
仕事もなく、日々の食事にも窮する暮らしですが、アサド政権が続く限り、祖国には戻らないと考えています。
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2021-6-11
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