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河井克行被告(2020年1月、時事)、河井案里元被告(2019年8月、同)

大規模買収 陣営に自民党本部が1億5000万円、提供者の法的責任は?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210613-00090300-otonans-soci

 2019年の参院選を巡る大規模買収事件で、公職選挙法違反(買収など)の罪で起訴された河井克行被告(元法相、自民党を離党)への判決が6月18日、東京地裁で言い渡されます。河井被告が選挙戦を指揮した妻の案里元被告(有罪確定)の陣営には、自民党本部から1億5000万円もの資金が提供されており、同じ自民党公認の溝手顕正氏(落選)の10倍に上ったことから、「誰が資金提供を決めたのか」も焦点となっています。

 河井被告は「1億5000万円は買収資金に使っていない」と主張しているようですが、もし、買収に使われていたら、資金提供した側はどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

条件そろえば「買収目的交付罪」も

Q.まず、河井克行被告が起訴された罪について、改めて教えてください。

佐藤さん「河井克行被告は妻の案里元被告が初当選(後に当選無効)した2019年7月の参議院選挙を巡って、案里元被告を当選させる目的で、選挙区の広島県内の地元議員や首長ら100人に対し、総額2900万円余りを配ったとして、公職選挙法違反の買収の罪で起訴されました。 公職選挙法221条1項1号は、当選を得させる目的をもって、選挙人、または選挙運動者に対し金銭などを供与すること(買収)を禁じており、違反すれば、『3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する』と定めています。また、『選挙運動を総括主宰した者(総括主宰者)』が買収を行えば、『4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処する』とし、法定刑が重くなります(加重買収)。

河井克行被告は総括主宰者に当たるとして、選挙期間中の買収に関しては加重買収の罪に問われています。なお、2019年7月の立候補届け出前に選挙活動をした罪でも起訴されています」

Q.河井克行被告は否定してはいますが、もし、買収資金に自民党本部からの1億5000万円の一部が使われていた場合、資金提供した側にも法的責任を問われるのでしょうか。買収の意図を知っていた場合と知らなかった場合とで、教えてください。

佐藤さん「公職選挙法221条1項5号は、買収行為をさせる目的をもって、選挙運動者に対し金銭等を交付することを禁じており、『買収目的交付罪』と呼ばれています。自民党本部側が、河井克行被告が買収行為に使うことを認識しながら、1億5000万円を交付したとすると『買収行為をさせる目的をもった金銭の交付』に当たるとして、買収目的交付罪に問われる可能性があります。一方、自民党本部側が河井克行被告の買収の意図を知らなかったのであれば、同罪には当たりません」

Q.買収の意図を「知っていた」か「知らなかった」かというのは、立証が難しいように思います。過去に買収目的交付罪で有罪になったケースはあるのでしょうか。

佐藤さん「買収目的交付罪が適用されるケースは多くはありませんが、有罪になったケースは存在します。1963年、島根県の県議選を巡る買収事件があり、村議会議員らが地元有力者の当選を図る目的で現金を配ったり、そのための資金を交付したりしたとして、公職選挙法違反(買収など)の罪で起訴され、有罪判決が出ました。買収罪などと合わせての罪の認定ではありましたが、買収目的交付罪も広島高裁松江支部は認定し、1966年7月、最高裁が上告を棄却して、有罪判決が確定しました。

買収の意図を『知っていた』か『知らなかった』かを立証するのは困難なことも少なくありませんが、一般的には、被告人や関係者の供述、残されたメモ、データといった客観的証拠を積み重ね、交付されたお金の流れや交付した者と買収した者の接触の頻度、タイミング、その際のやりとりなどを明らかにしていき、立証します」

Q.仮に、買収の意図を当初は知らなかったものの、現に買収が行われていることを知った場合、資金提供者側は通報の義務等は発生するのでしょうか。黙って見過ごした場合、共犯に問われる可能性はあるのでしょうか。

佐藤さん「買収の意図を知らずに金銭等を交付し、その後、買収という犯罪が行われていることを知った場合、資金提供者側は通報する法的義務を負うとはいえないでしょう。ただし、資金提供者側が公務員であった場合、その職務を行うことにより犯罪があると考えられるときは、告発しなければならない旨が刑事訴訟法239条2項で定められているため、場合によっては、告発の義務が認められる可能性もあります。…
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