ヤフーニュース6/14(月) 7:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20210614-00242866/

2021年6月10日、「表現の不自由展・東京」(正式名称は「表現の不自由展・その後 東京EDITION&特別展」)の実行委員会が会見し、6月25日〜7月4日に都内で予定していた展示が激しい街宣攻撃で会場変更を余儀なくされたこと、しかし不当な攻撃には屈せず、開催を続行することを宣言した。

「表現の不自由展」は、かつて公開中止など発表の場を奪われた美術作品などを展示し、作品に触れ表現の自由について考えてみようという趣旨で、最初2015年に都内で開催され、それを見た津田大介さんの提案で2019年の「あいちトリエンナーレ」の1企画として展示された。しかし激しい妨害にあって開催3日で中止に追い込まれ、大きな社会問題になった。その後、関係者の尽力によって会期中最後の1週間に展示が再開した。

そこで見られなかった人たちに見てもらうという趣旨もあって、その後、韓国や台湾で展示。2020年には東京など国内で展示が準備されていたが、コロナ禍の影響でようやく2021年6月25日から東京で、その後7月6〜11日に名古屋、さらに大阪や他の地方でも展示が行われることになった。

東京展開催がマスコミで報じられたのは6月3日。あまり早く発表すると不測の事態も予想されると、実行委員会としてはぎりぎりのタイミングで公表されたのだが、その3日後の6日から連日、会場に予定された神楽坂のセッションハウス・ガーデンに激しい街宣攻撃が行われたのだった。

発表から3日で会場に街宣攻撃が…
10日の会見は、「あいちトリエンナーレ」の時と同じ実行委員会のメンバーである永田浩三さんの司会で、岡本有佳さんと岩崎貞明さんが発言、集まった記者たちの質問に応えた。会場では「開催続行宣言 不当な攻撃には屈しません!」という文書が配布され、会場に予定されていたギャラリーのオーナーの「私の願い」という文書が読み上げられた。

説明された一連の経緯はこうだ。

6月6日日曜日の午前、街宣車3台、約10人が神楽坂の会場前に現れ、10〜20分ほど「表現の不自由展・東京」の中止を呼びかけ、会場を貸さないように要求。その後、午後1時半には街宣車と普通車計6台、16人ほどが同様に抗議行動を展開した。展示をめぐっては昨年秋から実行委は地元の牛込警察署と話をしており、その現場にも警察官がいたのだが、個別に説得するだけで排除には至らなかった。実行委によると、現場は住宅街で一方通行の狭い道で、なぜ1時間ほども6台の車が滞留できたのかわからないとのことだ。

大音量のマイクを使っての抗議行動だったため、警察が制止し、途中からマイクは使われなくなったが、大声の肉声で抗議行動が行われたという。そのギャラリーはもともと、「表現の不自由展」に出品している安世鴻さんの写真展が行われた場所で、展示にはオーナーが理解を示していたのだが、住居兼用の建物で、付近は住宅街でもあるため、激しい街宣抗議に深刻な影響を及ぼしたようだ。2階にギャラリーがある建物の地下にはダンス関連イベントのスペースもあり、近々そこでバレエの発表会も予定されていた。

オーナーは激しい街宣攻撃にその晩は一睡もできなかったと翌日、実行委に伝え、その後8日に第2回の街宣がかけられたこともあって、「もう身が持たない」と会場の使用中止を申し入れてきたという。

実行委は8日に弁護士を伴って牛込警察署を訪れ、警備態勢の強化を要請した。そしてその足でギャラリーを訪れたところ、夕方6時ころから再び街宣が行われていた。最初は男女2人が車で乗り付け、男性が運転席から大声で叫び、女性は車から降りて大声で叫びながらスマホで中継。「開催を中止せよ〜」「場所を貸すな〜」「反日展示会をやめろ〜」などと2時間にわたって抗議行動を行った。

さらに7時過ぎには他の車2台も訪れ、降りてきた男性4〜5人が拡声器を使って抗議行動。警察に制止されて途中で拡声器を使うのはやめたが、8時頃まで大声で叫び続けた。抗議する側は「慰安婦像を持ち込むな〜」「天皇陛下を燃やした動画をやめろ〜」などと叫んでいたという。ちなみに、今回は、平和の少女像は展示されるが、大浦信行さんの「遠近を抱えて」は版画のみで「あいちトリエンナーレ」で攻撃対象となった動画の展示予定はない。

街宣攻撃は、会見の行われた10日にも実行されていた。連日の街宣に心労が重なったギャラリーのオーナーは、苦渋の決断に至った気持ちを「私の願い」という文書にしたため、会見会場で朗読された。