新型コロナウイルスの影響が長引くなか、誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」の深刻化が危惧されている。統計がある大阪市内では、昨年1年間で約1300人にのぼり、前年から約1割増えた。感染対策で、人との交流が減ったり、民生委員らの見守り活動が難しくなったりしており、専門家は行政が安否確認に積極的に関与する必要性を指摘する。(森安徹、夏井崇裕)

山積みの食料

 「コロナが怖いから、家に来るな」

 離れて住む息子2人にこう告げていた元ラーメン店主の80歳代男性は今年3月18日、大阪府枚方市の自宅2階の寝室で死亡しているのが見つかった。死因は不明だが、死後約2か月たっていたとみられる。

 関係者によると、男性は感染が広がった昨春以降、自宅にこもりがちで、買い置きした商品が大量に残されていた。和室にはトイレットペーパーが30袋超。台所にはカップ麺などの食料品が入った段ボール10箱以上が積まれていたという。

大阪府吹田市で一人暮らししていた弟の安否を心配する姉のメール。この日、亡くなっているのが見つかった(画像は一部修整しています) 遺品整理会社への孤独死関連の相談も増加しており、近畿最大手の「関西クリーンサービス」(大阪市)では、昨年5月までは月20〜30件程度だった問い合わせが昨年9月に100件を超し、今年3月には211件に上った。

 運営会社の亀沢範行代表(40)は「見つかるまで相当の時間が経過したケースも目立つ」と話す。

中止2割

 各地の民生委員や社会福祉協議会はお年寄りの見守りに力を入れてきたが、感染が拡大して以降は活動に大きな制約を受けている。

 全国民生委員児童委員連合会の調査によると、全国約6200地区で昨年3〜8月に戸別訪問を中止した地区は約2割。訪問先を絞った地区も約7割に上った。交流サロンなどの集いをしていた約3300地区の約半数が取りやめていた。

 大阪府松原市の恵我地区では昨年4月からサロンを中止しており、民生委員の津村英子さん(74)は「じっくり話をする機会が減った。まめに電話しているが、対面の方が表情が見られて良いに決まっている」と危機感を募らせる。

 見守りとのはざまで、実際に孤独死も起きている。

 福島県南相馬市の復興住宅で昨年5月、同県浪江町から避難中の一人暮らしの60歳代男性が死亡しているのが見つかった。社協職員の訪問はコロナ禍で同2月から中止され、電話は同3月上旬を最後につながらなくなっていた。社協の担当者は「電話は詐欺を警戒して出ない人が多い。県などと連携して確認を徹底するよう改めた」と話す。

 河合克義・明治学院大名誉教授(地域福祉論)は「コロナ禍は親族や友人らと交流があったお年寄りたちをも孤独に追い込んでいる。行政が高齢世帯を全て訪問するなどして孤立している人を把握し、支援につなげる方策を検討しなければならない」と指摘する。


 同府吹田市の住宅でも3月6日、一人住まいの男性(59)が死亡から約半年たって見つかった。感染防止のため訪問を控えていた兵庫県在住の姉(63)は「何らかの形で助けを求めてくれていたら……」と悔やんだ。

遺品整理相談も

 孤独死に関する法律上の定義や国の統計はないが、大阪府監察医事務所は死後4日以上発見されなかったケースを「孤独死」として独自に集計しており、2020年は大阪市内(人口約275万人)で1314人確認された。前年から143人増え、18年の1240人を上回って集計を始めた17年以降で最多だった。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210616-OYT1T50137/