欧州での新型コロナウイルスの感染者のうち、インド型(デルタ株)の比率が急上昇している。
ワクチン接種が進む英国でもコロナ感染者が増加に転じる主因となっており、イングランド地方は
21日に予定していたロックダウン(都市封鎖)解除の延期を余儀なくされた。

死者や重症者は大きく増えていないものの、経済再開の障害になるおそれが強まっている。

ウイルスは一般的に変異を繰り返す性質を持つ。インドで発見されたデルタ株は
英国型(アルファ株)よりも40〜80%感染力が高いとされ、世界保健機関(WHO)によると80カ国で確認されている。

WHOのスワミナサン首席科学者は18日、「デルタ株は感染力が強く、世界で主流の変異ウイルスになりつつある」と述べた。

英国では、ワクチン接種が順調に進んだこともあって5月にかけて感染者が大幅に減った。
1日当たりの感染者数は2000人前後だったが、このところは1万人前後の日が続く。

デルタ株が流行しているためで、感染者の99%はデルタ株だ。
21日にはイングランドで都市封鎖を解除する予定だったが、感染者の増加で1カ月延期した。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ポルトガルでも感染者の96%はデルタ株だ。イタリアやベルギー、ドイツなどでも増え始めている。
欧州各国は夏のバカンスシーズンに向けてレストランやホテルを再開するなどしている。感染拡大が続けば、経済再開の足かせになりかねない。


もっとも、いずれの国も死者数は大きく増えていない。
英国では5月以降、1日の死者(陽性確認から28日以内の死亡)は10人前後の日が続いている。

ワクチン接種が進み、免疫を持つ人が増えたことが影響しているとみられる。

英BBCによると、イングランドでは12〜24歳の若い世代で感染が広まっている。
もともと重症化しづらい若年層の感染者が増えていることも一因だ。

ワクチンはデルタ株にも有効だが、1回だけの接種では発症を防ぎづらいとのデータがある。

イングランド公衆衛生庁によると、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックのワクチンを2回接種した場合は88%の予防効果があり、
英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大学のワクチンでは60%だった。いずれのワクチンも1回接種では33%にとどまる。

英国では成人の82%が1回目の接種を受けたが、2回目までを終えたのは60%となっている。
英政府はより多くの人に行き渡らせるために1回目と2回目の間隔を最大12週間としてきたが、2回目を優先するために8週間に短縮している。


ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のブレンダン・レン教授は20日、英スカイニュースに対して
「ワクチン接種が進んでいることは大きな望みで、感染者が増えても入院や死者は過去の流行時のように増えていない」と解説した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR203TR0Q1A620C2000000/