米中軍事衝突の確率を3月に65%に引き上げ−エノド・エコノミクス

台湾の防空識別圏(ADIZ)に15日侵入した中国軍機は28機と、1日当たり数としては今年最も多かった。13日に閉幕した主要7カ国首脳会議(G7サミット)の宣言に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が盛り込まれたばかりだった。

爆撃機や戦闘機、偵察機が中国沿海部から東進し台湾の南端付近に向かったが、台湾が実効支配している東沙(英語名プラタス)諸島を目指した中国軍機もあった。
台湾国防部(国防省)が詳細なデータを公表し始めた昨年9月16日以降、中国機は平均週1回のペースで東沙諸島に近づいている。

台湾よりむしろ香港に近い小さな離島が、中国人民解放軍が将来展開し得る台湾侵攻作戦の上陸地点になるのではとの観測が浮上しつつある。

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南シナ海に浮かぶ東沙島には海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)の職員ら約200人が駐在。台湾軍は東沙諸島の防衛に自信を示すが、台湾本島からは400キロ以上の距離がある。環礁に囲まれたこの島に対機甲ロケットを送り込み、中断していた滑走路改良事業を再開、防衛強化を急ぐ。

シドニーのマッコーリー大学で安全保障問題・犯罪学部門を率い台湾の防衛政策を研究しているベン・シュリア教授は「中国が離島の1つを占領しようとしているという深刻な可能性がある」と述べ、「それが起きれば国際社会は何をするだろうか。米国はどうするだろうか」と問い掛けた。

主に中国のマクロ経済・政治予測を行う独立系のエノド・エコノミクスは今年3月、米中軍事衝突の確率を65%に引き上げた。2019年1月は10%だった。

「台湾への奇襲攻撃は可能だが、より特徴的な中国のアプローチは台湾の抵抗意志を損ね、自国の行動を遡及的に正当化することを見据えた威嚇の強化だ」とチーフエコノミスト、ダイアナ・チョイレバ氏は分析。
「中国は現在、圧力を高める『グレーゾーン』作戦を通じた中台統一を実現しよう図っており、今後数年以内に人民解放軍が台湾海峡で米国に勝てるようになると信じている」と語った。

 台湾国防部が示した中国軍機の飛行ルート
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中国軍機の侵入は中国沿海部からの戦力投射であり、潜在的な紛争地域に米軍を来させないというけん制でもある。中台紛争が勃発すれば、台湾に基地のない米軍は遠く離れた日本や韓国、グアムに置く基地から戦力の展開を図るだろう。

米国のコミットメントは、日本から台湾を経由しフィリピンに南下するいわゆる「第1列島線」内での主要航路の安全確保だ。北京大学の南シナ海戦略的状況調査イニシアチブによると、米国防総省は今年、南シナ海上空の偵察飛行を約2倍にし、先月は72回のパトロールを行った。

米軍の飛行活動をモニターしているサイトによれば、多くがバシー海峡(台湾・フィリピン間)上空での活動だという。米海軍第7艦隊のマーク・ラングフォード報道官は先月のブルームバーグ・ニュースからの質問に対し「作戦上のセキュリティー」を維持する必要性があるとし詳細の提供を控えると書面で回答した。

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01年4月には米海軍の偵察機「EP3」と中国の戦闘機「F8」が衝突し、米軍機が海南島に不時着し20人以上が拘束されるという事件が起きた。
バイデン政権は中国側に不測の事態に備えたホットラインの開設をあらためて呼び掛けているが、進展はほとんどない。

 中国空軍の爆撃機「H6K」
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2021年6月21日 10:37
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-21/QUTWP3T0AFB601