【ロンドン時事】英国で欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が実施され、離脱派が僅差で勝利してから23日で丸5年が過ぎた。2020年1月末にはEUを離脱し、同年末に激変緩和のための「移行期間」も終了。しかし、離脱が残した影響は今後も長く英国にのしかかりそうだ。
<英国、EU離脱問題 関連ニュース>

 ジョンソン英首相は23日の議会答弁で「国民にとってより良い未来を形づくることができるようになった」と述べ、離脱の意義を強調した。
 しかし、国内の不満は隠しようもない。EU残留派が多数を占めた北部スコットランドのスタージョン自治政府首相は同じ日に「最良の未来はEU再加盟にあると確信している」と表明。英国からの独立を目指す考えを改めて示した。
 英領北アイルランドでは、離脱交渉で最大の障壁となった国境管理の問題が今もくすぶる。ジョンソン氏は北アイルランドと英本島の間に税関などの施設を設けることでEUと合意したものの、その後は国家の解体につながるとして履行を拒否。EUのフォンデアライエン欧州委員長らは「合意したことは履行しなければならない」と詰め寄っている。
 経済的打撃も明らかになりつつある。英統計局によると、英国とEUの貿易は移行期間終了後の21年1〜3月期、輸出入ともに約2割落ち込んだ。英シンクタンク「ニューフィナンシャル」のまとめでは、ロンドンの金融街シティーの約440社が事業や従業員の一部をEUに移転。金融資産の移転も総額9000億ポンド(約140兆円)に上るという。
 マンチェスター大のロバート・フォード教授は「5年たっても、われわれの分断は少しも変わっていない」と指摘。今後もさまざまな政治問題に、離脱をめぐる国民の意見の相違が影を落とし続ける可能性を示唆している。

時事通信 2021年06月27日07時08分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021062600368&;g=int&utm_source=top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit