新型コロナウイルス感染症が広まる中、世界中で出生率が大きく低下した。
日本も例外ではなく、今年の1〜3月の出生数は19万人余りと、コロナ禍前の妊娠を反映した前年同期に比べると10%近く少ない。
かつて産み控えが起こった1966年の丙午(ひのえうま)では、その後出生数は反騰した。
今回もコロナ禍で妊娠時期を一時的に遅らせているだけで、また回復するという見方には一理ある。
しかし、日本の出生率低下は第2次ベビーブームの終焉(しゅうえん)以来50年近く続く傾向だ。

なぜ日本の少子化は止まらないのか。一つの理由は、子育て支援政策が不十分だからだ。
日本は国内総生産(GDP)の1.8%を子育て支援にあてているが、
これは経済協力開発機構(OECD)平均の2.3%を大きく下回り、首位フランスの半分にすぎない。

もう一つの理由は、子育て負担が女性に集中しすぎているからだ。
OECD平均では女性は男性の1.9倍の家事・育児などの無償労働をしているが、日本ではこの格差が5.5倍にも上り、先進国最大だ。
家事・育児負担が女性に偏っていることは、出生率に悪影響を及ぼす。
米ノースウエスタン大のドゥプケ教授らは欧州19カ国のデータを用い、出産に対する夫婦の意識を分析した。

■妻が子育てに前向きになれる環境づくりを
その結果、夫は子どもを持ちたいと思っているものの妻が同意しないために、新たに子どもをもうけない夫婦が多いことがわかった。
さらに詳しく調べると、こうした夫婦では妻に育児負担が集中していた。
新たに子どもを持つとさらに自分に負担がかかることを見越し、妻は子どもを持ちたくないと考えているのだ。

これまでの少子化対策をめぐる議論は、夫婦全体としての子育て負担をどう減らすかという点に集中し、
夫婦間でどう負担が分担されているのかという視点が欠けていた。夫が前向きでも妻が後ろ向き、という夫婦が多いのならば、
妻が前向きになれる環境を築くことが鍵になる。効果的な少子化対策のためには、ここに狙いを定めるべきだ。

具体的には待機児童の解消や学童保育の充実が挙げられる。夫が育児・家事に参加する機会を増やすための施策も必要だ。
男性の育休、育児のための時短勤務、テレワークなどのワークライフバランス改善策も推進せねばならない。
男性を家庭に返すことは、最善の少子化対策でもあるのだ。

山口慎太郎東京大学経済学研究科教授。内閣府・男女共同参画会議議員も務める。
慶応義塾大学商学部卒、米ウィスコンシン大学経済学博士号(PhD)取得。カナダ・マクマスター大学准教授などを経て、2019年より現職。
専門は労働市場を分析する「労働経済学」と、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」。
著書『「家族の幸せ」の経済学』で第41回サントリー学芸賞受賞。近著に『子育て支援の経済学』。
[日本経済新聞朝刊2021年6月21日付]
https://news.yahoo.co.jp/articles/3f705efab663eb1598e64b26c6a6c765af36c883

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