政府は、美容師の国家試験科目の見直しに乗り出す。
現在の科目は、戦後間もなく流行したパーマ技術が必須とされる一方で、目の周りのおしゃれとして人気の「まつ毛エクステンション」などが含まれず、
時代に即したものにするべきだとの声が高まっているためだ。政府の規制改革推進会議の作業部会で近く議論を始める。

■「使っていない技術」の実習に数百時間

 美容師免許は、美容師法(1957年)に基づく国家資格で、試験は年2回行われる。
筆記と実技があり、実技で散髪とパーマの技術が試される。パーマはロッド(棒)を巻き付けて行う「ワインディング」と、
指とくしで髪を波立たせる「オールウェーブセッティング」のいずれかが出題されるため、どちらの技術も習得する必要がある。

 オールウェーブは髪全体にローションを塗り、波打たせる髪形だ。
終戦直後から1960年代に人気だったが、現在実際に店で使う機会はほとんどない。
ただ、難しい技術を伴うため、専門学校など美容師養成施設で必須とされる810時間以上の実習のうち、数百時間が充てられているという。

 「日本美容サロン協議会」(東京)が現役美容師を対象に実施したアンケートでは、実技試験で「今は使っていない技術」にオールウェーブを挙げた人が35%に上った。

■まつ毛エクステ、カラーリングに実技なし
 一方、まつ毛に人工毛を貼る、まつ毛エクステンションは、施術ミスで目が傷つくなどの被害報告も相次ぐ。
2008年、施術に美容師資格が義務づけられたが、現在も実技試験はないままだ。髪を染めるカラーリングも実技試験はない。

 同協議会によると、専門学校入学から美容師として独り立ちするまでの平均期間は、英国の約3年に対し、日本は6〜7年を要するという。
「資格が実践的でない」との指摘があり、美容師を目指す人からは「古いパーマの習得に充てる時間を、
流行のパーマやカラーリングを学ぶ時間に充てたい」との要望が出ている。

 自民党有志による「美容サロンに関する議員勉強会」(上野賢一郎座長)は今月4日、
河野行政・規制改革相に美容師の国家試験改革を求める提言を行い、河野氏は「検討したい」と応じた。
試験内容の変更には、政省令改正や通知による運用の見直しが必要なため、今後、美容師資格を所管する厚生労働省と協議して検討を進める考えだ。

 厚労省によると、2019年度末現在、実際の仕事に就いている従業美容師数は約54万人。20年度の試験には約1万8000人が合格している。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bee4f2a70fd1390fe6901d19cc1af72624310a09
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