新型コロナウイルスの感染拡大が続く東京都で、都民が外出を控える程度を示す自粛率が低下していることが、読売新聞と国立情報学研究所の水野貴之准教授(計算社会科学)の分析でわかった。特に3回目の緊急事態宣言(4月25日〜6月20日)の解除直後の週末の昼間は、コロナ流行前と同程度に外出しており、感染の再拡大に影響しているとみられる。

 自粛率は、コロナ流行前の昨年1月と比較し、「住宅街の住民がどのくらい外出を控えているか」を数値化したもので、水野准教授らが考案した。自粛率「0」は、自粛せずにコロナ前と同じくらい出歩いている状態で、「1」に近いほど多くの人が家の中で自粛している。主要駅周辺などに限定した人出の分析に比べ、コロナ下での全体的な外出自粛の傾向が分かる。


 東京都内の週末・祝日の昼間は、昨年4〜5月の1回目の緊急事態宣言期間中や、今年の正月は多くの人が外出を控え、自粛率は0・6に達した。

 だが、今年4月の3回目の宣言発令直後は、0・3近くまでしか上がらず、同宣言解除後の6月下旬には、コロナ流行前の水準に近い「ほぼ0」まで下がった。

 東京以外の地域ではコロナ前より外出を控える傾向が続いており、東京の「緩み」が目立つ形だ。

 ただ、東京でも、夜間(午後8時〜午前0時)については今年1月以降、自粛率は0・5前後あり、飲食店の夜間営業自粛などが奏功しているとみられる。

 年代別にみると、週末・平日を通して10〜20歳代の外出が目立っていることも分かり、水野准教授は「東京では週末の外出の増加が、感染拡大の一因と考えられる。特に若者についてはワクチン接種もまだ進んでおらず、外出を控えるよう政府はメッセージを出すべきだ」と指摘している。

  ◆自粛率= 携帯電話の位置情報から滞在人口を推計するNTTドコモの「モバイル空間統計」のデータを利用。住宅街における深夜(午前0〜6時)の滞在人口を定住人口とみて、そこから昼間(午前9時〜午後6時)の滞在人口を差し引くことで「昼間の外出者数」を推計し、コロナ前からどの程度減ったかを算出する。

読売新聞 2021/07/09 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210709-OYT1T50079/