気候変動問題について、トランプ大統領は在任中、「科学的根拠なし」としてその重要性をほとんど無視し続けてきた。
しかし、統合参謀本部を頂点とする米軍の現場では、同政権スタート以前から、
干ばつ、洪水、豪雨による河川氾濫、沿岸の水位上昇による浸水など、地球温暖化に起因する人的被害の拡大によって
民族移動、政情不安、社会的混乱、軍事クーデターにつながりかねないとして、軍事戦略の一部に組み込む動きが出始めていた。

(中略)
 ロイド・オースチン国防長官は早くも、1月27日、「国内外における気候変動危機への対処について
Tackling the Climate Crisis at Home and Abroad」と題する声明を発表、この中でまず
@わが国の軍事基地・施設では毎年、洪水、干ばつ、山火事、異常気象がもたらす災害とその影響に直面している

Aわが軍の司令官たちは同盟諸国軍の同僚たちとともに毎年、砂漠化によって引き起こされる
諸外国の社会不安、敵対国が北極周辺諸国にもたらす脅威、世界的規模の人道支援の要請などに対応するための共同作戦や演習を余儀なくされている

B2019年1年間だけでも、国防総省は79か所の軍事基地・施設、そして多方面にわたる作戦展開地域における気候変動が及ぼすさまざまなインパクトについて、
具体的な評価作業を行った―などの点を指摘した。

 その上で、「国防総省としては、米国民をその影響から守るべく、気候変動を『国家安全保障問題』と位置付け、怠ることなく対処していく」として、
より具体的に「社会混乱・不安の誘因となる気候変動軽減化に向けて、軍事活動を優先的に展開できるよう、
ただちに政策遂行に着手する」「この問題に関し各省庁間のリーダーとして、国防総省は、
気候変動リスク分析を机上シミュレーション、戦時ゲームそして、次なる『国家安全保障戦略』の中に組み込んでいく」との緊急性を帯びた決意を示した。

(中略)
 「すでに世界全体にとって、深刻な安定破壊要因となっている。
北極圏では、凍土の溶解が進むにつれて隣接諸国間で資源獲得と影響力拡大競争が激化している。
赤道直下では、海温上昇、異常気象そして大干ばつにより、アフリカから中南米に至る広範囲な地域で農作物不作、飢餓、河川氾濫などによる
住民移住を引き起こしている。従って我々はただちに行動を起こす必要がある」

 「また、太平洋地域においても、海洋の水位上昇、暴風雨の頻発により、各国で家族、地域住民の集団移動を余儀なくされ、
治安維持、暴動鎮圧に対処すべきグローバルな集団安全保障の能力が大きく制約を受けている」

(中略)
 その中には、以下のような指摘がある:

・2020年代までに、中央、南、東および東南アジアの大きな河川地帯で飲料水不足の発生が見込まれる
・南、東、東南アジア沿岸諸国の過密人口地帯が、海面水位上昇、河川氾濫に直面する大きなリスクを抱えている
・急速な都市化、工業化そして経済開発に伴い、気候変動が天然資源と環境に及ぼす影響が深刻化する
・東、南、東南アジアにおいて、水文学的循環hydrological cycleの変容が起こることから、
海岸・河川氾濫と干ばつに起因する下痢、コレラの集団発生そして広範囲におよぶパンデミックの増加が予測される


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