伸び悩みの背後には、副反応を恐れて接種しない人々や積極的に接種しない若者層以外に、
ワクチン接種を拒否している推定25%の人々がいる。

ワクチン接種を重視する民主党支持者が多い“青い州”カリフォルニアにも反ワクチン派が少なからず存在しているのだ。

ロサンゼルスのフリーウェイを走ると「ファウチ博士を逮捕せよ」
「ワクチン接種による死者4000人」などと書かれた大きな落書きが目に飛び込んでくる。

ワクチンの有効性どころか、ワクチンは人体に悪害をもたらすと頑なに信じる人々がいるのである。

そして、ほとんどの新規感染はワクチンの未接種者で起きている。
ロサンゼルス保健局によると、新規感染者、入院患者、死者の99%以上がワクチン未接種者だった。

また、新規感染者の約87%が50歳以下だった。

加えて、マスクレスにもリバウンドの原因が見出されている。
ワシントン大学医学部保健指標評価研究所のクリストファー・マレー所長は
「感染の再拡大は、デルタ変異株と、人々がマスク着用を止めて予防しなくなったためです」とビジネスインサイダーで指摘している。

デルタ変異株の割合が増加しているにもかかわらず、ワクチン接種完了者は半数に留まり、常態化してしまったマスクレス。

学校や職場では誰がワクチン接種を完了しているのかもわからない。
それは、医療施設でさえも同じだ。大学病院で看護師を務める友人はこんな懸念を示した。

「周囲にいる医療従事者たちがみなワクチン接種をしたかどうかわからないのよ。個人情報だからね」

周囲にいる人々がワクチン接種をしたかどうか不明な状況は、ワクチンを接種した人々に大きな不安を与える。
安心して仕事をしたり、勉強をしたりできる環境作りが重要だ。

そのため、ワクチン接種を義務化する動きがカリフォルニア州では高まっている。
カリフォルニア大学とカリフォルニア州立大学の学校群は、秋学期から受講する学生や勤務する大学職員のワクチン接種を義務化した。

また、アメリカでも先進的なサンフランシスコ市は、FDA(米食品医薬品局)が正式にワクチンを承認した場合、
医療関係者や35000人の全職員に対してワクチン接種を義務化する(宗教や健康上の問題がある場合は除く)と発表している。

もっとも、個人の自由を標榜しているアメリカだ。ワクチン接種の義務化に反対する声もある。医療関係者さえも反対している。
テキサス州のある病院では、病院側にワクチン接種を義務化された従業員が接種拒否したために解雇され、病院を相手に訴訟を起こした。

アメリカの企業もワクチン接種を義務化するかが議論されている。米国企業で人事マネージャーを務める友人はこう話している。

「企業もワクチン接種を個人の自由とするか義務化するかで板挟みになっている。
私の会社では社員のワクチン接種を義務化しないかわりに、社内でのマスク着用を義務化している」

ロサンゼルスの現状は、今後日本で起きうる2つのシナリオを示唆しているように思う。
ワクチン接種率については、日本は時間がかかったとしても、最終的には、自由を標榜するアメリカよりも上回る可能性があると筆者はみている。

その理由は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授で、『銃・病原菌・鉄』の著者・ジャレド・ダイアモンド氏が以前、
筆者のインタビューに対してしたこの発言に見出せると思う。

「日本人は自由を訴えるアメリカの人々に比べると、お上の指示を順守する傾向がある」

同氏の見方通りに事が運ぶなら、現在はワクチンの供給不足により接種状況が滞っているものの、
供給が増えれば、長期的には、日本の接種率はアメリカを追い越すのではないか。

加えて、日本には“人の目”という強い同調圧力がある。日本人は横並び意識も強い。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/85379?page=4