大手住宅メーカー・タマホームで社内に事実上の“ワクチン禁止令”が出されていたと「週刊文春」で報じられた。同社の玉木伸弥社長は「5Gがコロナ感染を引き寄せる」「ワクチンを接種したら五年後に死ぬ」など、ネット上に拡散されている情報を信じ込んでいたという。

 その後、プレスリリースにて「新型コロナワクチンを接種しないよう強要している」「新型コロナワクチンを接種した場合、懲戒解雇にすると発言している」という内容については否定、「新型コロナワクチンの接種につきましては、個人の判断に委ねております」と発表した。

 ワクチンにまつわるハラスメントが世間で問題視されるなか、大きな注目を集めた出来事だが、ワクチンの接種は“あくまでも自由”としながらも「社内で圧力を感じている」という人たちも少なくない。

「あいつは反ワクチンだ」と陰口を叩かれる

「あくまでも自由なんですよ。なのに社内では“あいつは反ワクチンだ”と陰口まで叩かれています」

 リモートワークの合間にビデオチャットを通じて取材に答えてくれたのは、東京都内の会社に勤める坂井和彦さん(仮名・30代)だ。坂井さんの会社では今年6月ごろから、ワクチンの「職域接種」が始まった。だが、坂井さんはまだ1度目の接種も受けていない。

「私はインフルエンザの予防接種だって、毎年欠かさず受けています。ですが、新型コロナのワクチンは、さまざまな資料や報道を見ましたが、やはり安全性という点で疑問が残ります。だから今は打たない(様子を見ている)、というだけ」(坂井さん、以下同)

 職域接種が始まる直前、坂井さんが所属する部署の部長と二人の副部長がやってきて「ワクチン接種が始まるが、強制するものではない」と告げた。

 部署内の空気は、ワクチンについて「5G受信するんじゃね?」という、ネット上で拡散されたデマを逆手に取った冗談さえ飛び交うほど、のんびりとしたものだった。

口では「君の自由だから」と言いながらも…
 20人ほど在籍する部署のほぼ半分は、その日のうちに予約を済ませたという。

「私もいつかは打とう、とは思っていました。ただ、私は若いし独身。基礎疾患がある方、高齢の方から先に接種してもらい、余っているなら打つか、という程度の認識でした」

 坂井さんを除く残りの半分は「注射が嫌だ」とか「面倒くさい」とか、またある同僚は「副反応が怖い」といって接種を見送ろうとしていた。だが、そこにやってきたのは前出の部長と二人の副部長。さらに、重役クラスの幹部社員も加わっていた。

「部長が“ワクチンはいつ打つの?”としきりに聞いてくるんです。会話の最後には“まあ、君の自由だから”というのですが、“圧力”を感じるんです。幹部も後ろでウンウン頷きながらその様子を見ている。私が何か間違ったことをしているようで気まずい雰囲気でした」

 それから一週間ほどして、坂井さん以外の全員がワクチンの接種を受けたが、この時には「圧力」も相当なものになっていたという。

「朝なんて、おはようの前に“いつ打つの?”と部長に言われる。日に何度も“ワクチンを打たないデメリットがこれだけある”という会社の医務室からのメールが届きます。もちろん“君の自由だ”とも言われますが、ほぼ強制ですよ」

 坂田さん自身、ワクチンを接種すれば五年後に死ぬとか、コロナは風邪にすぎないなどといったデマは信じていない。だが、ここまで接種を迫られると「天邪鬼になってなんだか打ちたくなくなってくる」と漏らす。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0431fcb43f6608f41b332406eb0c76876fb3c720