0001樽悶 ★
2021/08/15(日) 18:30:29.60ID:UuxBvM7L9https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20210815-00000010-mai-000-1-view.jpg
米国がアフガニスタンの駐留軍を8月いっぱいで撤退させると決めたことから、周辺地域で懸念が強まっている。私は11年前に、隣接する旧ソ連のタジキスタンを訪れた。当時を振り返りながら、隣国を覆うアフガンの影について考えたい。
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◇脅威にもなるアフガンとの深いつながり
もともとは歴史を共有し、民族的にも近い二つの国である。9世紀後半に成立したイラン系サーマン朝が今のタジキスタンとアフガンを版図に組み込み、13世紀にモンゴル帝国が、14世紀後半にはチムール帝国もこの地域を支配した。タジキスタンではペルシャ系のタジク人が人口の8割以上を占め、アフガンの人種別人口構成でもタジク人がパシュトゥン人に次いで多い。タジク語とアフガンの公用語の一つであるダリー語は近いといわれる。
このときの私は国境の町ニジノピャンジで別の取材にも当たっていた。それはアフガンで製造された麻薬がタジキスタンに流入しないように水際で食い止める取り組みである。タジキスタンの税関担当者はアフガンから入国している車を1台ずつ止めて、麻薬が隠されていないかを入念に調べていた。
アフガンで製造されたヘロインがタジキスタンでは1キロ当たり800ドルで売られ、更に西へと運ばれていくと、ロシアでは5万ドル、ヨーロッパに入ると30万ドルまで値上がりすると伝えられていた。価格の信ぴょう性は定かでないが、私はモスクワの市場でアフガン人の男に麻薬を買わないかと誘われた経験がある。
この男は鼻を押さえて麻薬を吸う仕草をすると「一つ1500ルーブル(当時のレートで約4500円)で買う気はないか」とささやいてきたのだ。アフガン産の麻薬がタジキスタンに流れているのは否定しようのない事実だった。
そこからロシアや欧州に運ばれるのだろう。つまり当時からタジキスタンにとってのアフガンとは、歴史的にも経済的にもつながりのある隣国だが、混乱をもたらす潜在的な脅威でもあったのだ。
◇逃亡アフガン兵が流入
アフガン駐留米軍の撤退決定は、タジキスタンにも影響を及ぼしている。支配地域の回復を目指すタリバンの攻勢は止まらず、対照的に士気を失った1000人以上のアフガン軍兵士が7月初め、タジキスタンに逃亡した。タジキスタン政府は急速に懸念を深めており、自国も加盟しているロシア主導の軍事機構「集団安全保障条約機構」に有事の際の支援を要請した。この月の下旬には予備役も招集し、演習を実施するなど有事に備えている。
風雲急を告げるアフガン情勢について、私が出張した際に取材を手伝ってくれたジャーナリストのアクラム・アブドゥカホルさんは次のように話す。「政府は最悪のシナリオへの準備を余儀なくされている。タリバンが勝利を収めたとしたら、現政権を支持してきたアフガン国民がタジキスタンに押し寄せてくる可能性は排除できない」
タジキスタンなど中央アジア諸国や後ろ盾となるロシアが最も恐れているのは、タリバンがアフガンで再び実権を握り、イスラム教の過激思想が周辺国に広がることだとみられている。「タジキスタンが今、最も恐れていることはそれだ」とアブドゥカホルさんも指摘する。更にタリバンに加担している過激な勢力がタジキスタンに侵入するような事態も懸念されているという。
79年のアフガン侵攻は、現地のイスラム過激思想がソ連領だった中央アジアに波及する事態を当時のソ連が恐れ、予防的な措置を講じることも目的の一つだったと言われている。40年以上が経過し、その脅威が今、タジキスタンなどに押し寄せようとしているのだ。
現地に足を運んでみると、タジキスタンが貧しい国であることは一目でわかる。20年の1人当たりの国内総生産(GDP)は844ドルにとどまり、ソ連から独立した15カ国の中で最も低い。首都ドゥシャンベからニジノピャンジを結ぶ幹線も舗装されていない箇所があり、泥道で横転している大型トラックを目にしたほどだ。
それでも取材に同行したアブドゥカホルさんが口にした次の言葉が忘れられない。「タジキスタンがソ連の領土になったことに感謝している。ソ連の一部になったことで電気も水も通るようになった。そうでなければ今でもアフガンとたいした違いがなかったのかもしれない」
隣国アフガンとの距離はわずかだが、タジキスタンは曲がりなりにも安定を享受している。だが今後のアフガン情勢次第では、混乱が押し寄せてくる可能性は否定できないのだ。【大前仁】
毎日新聞 8/15(日) 9:48配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210815-00000010-mai-int