車の脇や後ろから突然現れるバイクにどきっとした経験を持つ人は多いはず。車を左側から追い越したり、停車中の車の前に割り込んだりする「すり抜け運転」は重大な事故にもつながりやすい。大阪府警は、バイクの運転手らに注意を呼びかけている。

 「死亡事故が増えているので、危険な追い越しなどはしないようお願いします」。7月下旬、平日の朝、寝屋川署員ら10人ほどが走行中のバイクを止め、運転手に「すり抜け運転ストップ」などと書かれたチラシを配るなどして注意を呼びかけた。

 府警によると、すり抜け運転とは「二輪車が車の側方を通過すること」。

 停車や徐行する車の前に割り込む▽追い越しのために中央線の右側を走行する▽走行中の車を左側から追い越すといった運転のことで、道路交通法で禁止されている。違反をすれば交通反則切符交付の対象だ。

 くねくねと走るバイクを想像しがちだが、進路変更しない場合でも、速度や状況によっては道交法の「安全運転義務」に違反する可能性があるという。

 府内ではバイクの死亡事故が多発している。今年1〜6月、バイクが絡む事故は2954件で前年同期比で141件減ったが、死者数は10人増えて28人。交通事故で亡くなった人全体の約4割を占める。

 府警はすり抜け運転が死亡事故の原因になりやすいとみている。交通総務課によると、走行中のトラックを左側から追い抜こうとしたバイクがトラックと縁石の間に挟まれたり、複数の車を蛇行しながら追い越そうとしたバイクがハンドル操作を誤り転倒したりして死亡する事故が府内で起きている。

 「渋滞を抜けるのに便利では」と思う人がいるかもしれないが、代償も大きい。交通事故の問題に詳しい岸正和弁護士(大阪)によると、「すり抜け運転で事故を起こせば、そうでない場合より過失割合は大幅に大きくなる。損害賠償を求められる可能性もあり、リスクの高い行為だと認識してほしい」と話す。

 府警は今年4月末から「二輪車『すり抜け運転』ストップ運動」を開始。チラシやポスターを府下全域のバイク販売店などに配るほか、死亡事故の6割以上を占める通勤・通学時間帯(午前6〜10時、午後4〜8時)に重点的にパトロールして警戒を強めている。

 松島徹・交通部調査官は「バイクは車の死角に入りやすく、事故にあった際の致死率は車より高い」と危険性を指摘する。8(バ)月19(イク)日は「バイクの日」。松島調査官は「小回りが利くのがバイクの利点だが、特権があるわけではない。車と同じルールを守って、安全運転を心がけてほしい」と話す。(山本逸生)

朝日新聞社
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