100年前から使用されている結核予防用のワクチン(BCGワクチン)が、高齢者での新型コロナウイルス感染予防に役立つ可能性が新たな研究で示唆された。

National Institute for Research in Tuberculosis(インド)のSubash Babu氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」8月4日号に掲載された。

BCGワクチンが最初に使用されたのは1921年のことである。現在では、BCGワクチンは世界保健機関(WHO)の必須医薬品モデルリストに含まれており、
世界中で毎年1億3000万人以上の乳児が同ワクチンを接種している。

BCGワクチンは、結核以外の呼吸器疾患に対しても有効である可能性が報告されている。
例えば、BCGワクチンの初回接種により、結核以外の原因による小児の死亡リスクが低下することが複数の研究で示されている。

BCGワクチンの他の感染症に対するこのような予防効果は、小児に限られたことではない。
このワクチンを接種した青年期や高齢期の人々でも、気道感染のリスクが抑制されたとする結果が報告されている。

こうした状況から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBCGワクチンの予防効果にも期待が持たれ、さまざまな研究が行われてきた。

また、Babu氏らによると、新型コロナウイルス感染者が多いにもかかわらず、
COVID-19ワクチンの入手が難しい一部の国では、専門家が、高齢者を守るための一時的な手段としてBCGワクチンの導入を検討しているという。

Babu氏らは今回、60〜80歳の高齢者にBCGワクチンを接種し、接種前と接種から1カ月後に、
血中の炎症に関わるさまざまなバイオマーカーを測定した。その上で、同ワクチンがこれらのバイオマーカーに及ぼす影響を調べた。

その結果、ワクチン接種の1カ月後には、炎症関連のバイオマーカーである、さまざまなサイトカインのレベルの低下が明らかになった。
サイトカインは主に細胞から分泌されるタンパク質で、免疫細胞の活性化や抑制に関与している。インターロイキンやケモカイン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)などがその代表例である。

また、炎症の急性期に放出量が増えるC反応性タンパク質(CRP)や、ハプトグロビンなどの急性期タンパク質の血中レベルも、
ワクチン接種前と比べて、接種1カ月後には低下していた。

さらに、肺の炎症に伴い増加するタンパク質分解酵素のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、
トランスフォーミング増殖因子-α(TGF-α)などの増殖因子のレベルの低下も確認された。MMPレベルの低下は、BCGワクチンの接種により、
新型コロナウイルスに感染した際に、肺の損傷が抑制される可能性のあることを示唆している。

このような結果を受けてBabu氏は、「BCGワクチンには、COVID-19のワクチンの効果を高めるための補助的な役割が期待できる。
新型コロナウイルスに感染した患者の治療薬として投与した場合の効果を調べる必要がある」と述べている。
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