カブールの国際空港付近で26日に起きた自爆テロで、米国のバイデン政権が恐れていた事態が現実となった。自国民の退避が終わらないうちに多数の犠牲者が出たことで、今月末の米軍撤退にこだわるバイデン大統領への批判は強まるばかり。米国と歩調を合わせる日本の退避活動にも懸念が広がっている。(ワシントン・金杉貴雄)

 「アフガニスタン駐留米軍にとって2011年8月以降、この10年で最悪の日」「昨年2月以降で戦死は初」―。米メディアはこの日、テロ攻撃を受け次々と速報し、衝撃の大きさを物語った。バイデン氏はもともと米軍撤退の理由について、これ以上米軍の若者に犠牲者を出さないためだと説明していた。だが、今回の自爆テロで多数の米兵が死傷する結果となった。
 バイデン氏は急きょ演説してテロ組織への報復を誓ったが、アフガンはタリバンが掌握し、手段は限られている。むしろ米中枢同時テロをきっかけとした20年の戦争を経て、タリバン支配のアフガンが再びテロの温床になるとの懸念は、現実味を帯びてきた。

 国防総省は26日の記者会見で、米国人がアフガンにまだ1000人強残っており、3分の2以上が退避を希望していると明らかにした。米軍撤退期限の8月末までに退避させたい意向だが、安全確保は空港周辺を制圧するタリバン頼りで、さらなるテロを防げるか疑問符がつく。
 「取り残された米国人は事実上タリバンの人質になる」(米メディア)との指摘も。バイデン氏は、米軍協力者のアフガン人について「戦争後に希望する全ての人を退避させることが保証できた紛争はない」と取り残される可能性があることを示唆した。
 野党共和党議員からは「バイデン氏は辞任すべきだ」「米軍最高司令官として不適格だ」と批判が噴出。与党民主党からも対応を疑問視する声が出ている。

◆欧州各国で退避作戦の終了相次ぐ テロで継続困難に
 欧州各国の間では、自国民やアフガニスタン人協力者らを退避させる作戦を終了する動きが広がっている。26日はドイツやオランダ、ベルギー、ポーランドが作戦を終了。欧州メディアによると、5000人超を退避させたドイツのクランプカレンバウアー国防相は「今回のテロは作戦継続は困難だとはっきり示した」と表明。オランダ政府は「退避資格がある人々が取り残されることになるため、つらい瞬間だ」などと議会側に説明した。デンマークは25日に作戦を終了した。
 フランスはマクロン大統領が26日、訪問先のアイルランドで「まだ数百人を退避させなければならない」と述べ、27日に作戦を終了する計画。英国のウォレス国防相も同日の英BBC放送のインタビューで「退避(作戦)は1日以内に終わる」と語り、同日中に約1000人を退避させて作戦を終える方針を示した。スペインも同日の終了を発表している。(ロンドン・藤沢有哉、パリ・谷悠己)

東京新聞 2021年8月28日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/127288