■むし歯治療に使われる詰め物がむし歯を増やしている

 【歯科医】保険診療は、歯科治療の大量生産みたいなもの。そもそも削ったり詰めたりする行為にしか報酬が設定されていないので、一人の患者さんにかける時間も短くなる。だから、原因除去も行わないし、患者さんの生活習慣を改善するような話をする時間もないんですよ。

 【患者】わたしが今まで受けていた治療もそんな感じです。それが普通だと思っていました。

 【歯科医】歯科材料も日本と海外の差が開いてきています。たとえば、今、保険診療で詰め物をするときはパラジウム合金が使われています。パラジウム合金というのは、スウェーデンでは十数年も前からむし歯が再発しやすく、アレルギーの原因にもなるということで使用禁止になっています。

 【患者】そうなんですか?

 【歯科医】パラジウム合金は、むし歯の再発を起こしやすい上に金属アレルギーの原因のひとつといわれています。だから、日本では保険適用外のセラミックがスウェーデンでは一般的な歯科材料として使用されているんですよ。

 【患者】え。スウェーデン人になりたい……。

 【歯科医】金属のかぶせ物や詰め物は歯とのすき間をセメントで埋めるため、時間が経つとセメントが劣化してすき間ができます。そこから細菌が入って、またむし歯になってしまう。

 【患者】だから一度治療した歯が、またむし歯になってしまうんですね。

■むし歯をドリルで大きく削る治療法は間違っている

 【歯科医】前にも言いましたが、むし歯治療を4〜5回繰り返すと歯がなくなる。それは、日本の歯科治療では「予防拡大」といって、むし歯をドリルで大きく削るのが当たり前に行われていたからです。

 世界的には、可能な限り歯を削る量を少なくするMI(ミニマルインターベンション)治療が主流になってきています。当院でも「マイクロスコープ」という治療用の顕微鏡を見ながら視野を拡大して治療を行うことで、歯を削る量を最小限にしています。

 【患者】日本の歯科治療の遅れが身に染みます。そういう、最新治療が標準になってほしいですが……。

 【歯科医】現状では、難しいでしょうね。制度の問題が大きい。患者さんにとって最善の治療を提供しようと思ったら、保険制度がネックになってしまうんですよ。

 【患者】中高年になると、「いよいよ根の治療をやる」とか「神経を取ることになった」といった話を友だちから聞くことが増えました。こういう治療って、むし歯の末期治療ですか? 

 【歯科医】そうですね。神経を取る治療というのは、歯医者さんで「根の治療」とか「根管(こんかん)治療」と呼ばれるもの。これは、むし歯が神経まで達しているときに、神経を取って、歯の根の深い部分まできれいに掃除をして封鎖するという治療です。

 ただし、歯医者さんで「神経を取る」と言われたときは、その治療を本当にやるべきか慎重に考えたほうがいいですよ。

 【歯科医】わたしたちが歯の神経と言っているものは、歯の中心の空洞の中にある歯髄(しずい)のことです。歯髄には神経組織と血管が集まっていて、歯に栄養を運んだり、食べ物を噛んだときの刺激を脳に伝えたりしています。

 この歯髄を取れば、歯に血液が行かなくなる。そうすると、歯に栄養が行かないだけでなく、白血球の免疫作用も働かなくなるので、細菌の侵入に対する防御力がなくなります。つまり、感染症になりやすくなるとか、ばい菌の毒素が全身に回りやすくなる原因になるんです。

 【患者】あれ?  それじゃ、せっかく治療しても余計悪くなっているような……。

 【歯科医】そう。神経を取ってしまうと歯は弱る一方。しかも、痛みを感じないので、むし歯が再発しても気づきにくくなります。神経を取るメリット全然なしじゃないですか。だから、歯医者さんで「神経を取る」「取っても何の問題もない」と言われたらそれは大間違い。

 今は「歯髄温存療法」といって、神経を取らずに治療できる方法もあります。神経については、時間やお金をかけても取らないようにするのが一番! 

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6bc4087ed74602f5388ff5f80b739d8fb77c35f?page=1