東京・池袋で2019年4月に起きた暴走事故で、東京地裁は9月2日、乗用車を運転していた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)に判決を言い渡す。

事故で妻真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)を失った松永拓也さん(35)は、今も無罪主張を続ける被告にこう呼びかける。
「1審判決が出たら、もう争いを終わりにしませんか」


「飯塚幸三被告人へ」。松永さんは今月5日、自身のブログに約1100文字のメッセージをしたためた。
ブログは再発防止に向けた活動などを発信するため、事故後に始めた。
これまで国への要望活動や裁判で感じたことなどを記してきたが、被告の実名を出したことは一度もなかった。

松永さんは取材に対し、文面は前日に30分足らずで書き上げたことを明かした。
「ブログを見ていると言っていたので、被告に思いが届くのではないかと考えました」。
被告に直接質問をした6月の公判で、遺族の思いを理解しているか尋ねた際、飯塚被告は「ブログや新聞記事を読んでいるので、十分理解しているつもりです」と答えていた。

「判決を前に私の願いを書きます」と書き出したブログは、こう続く。
「あなたの法律上の無罪を主張する権利は尊重しています。
正直、私たちはそれにずっと苦しめられてきましたが、罪と罰から逃れようとする事も一定の理解はします」

どのような主張をするかは被告の自由だ。
「被告の心や行動はコントロールできないし、強制するつもりもない」と取材で松永さんは強調する。

一方、法の枠組みの中で厳罰を求める考えや刑務所で罪を償ってほしいという気持ちは持ち続けているが、裁判が続くなか「誰も幸せにならないというモヤモヤする気持ちがずっとあった」と振り返る。


「2人の命が戻ってくるわけではなく、どんな判決でも救われない。
私たちもそうですが、被告自身や被告の家族も幸せになれるのかと考えると、裁判を続ける意味はあるのかと思うようになった」

公判での被告への直接質問を前に「私は鬼になる」と話した松永さんだが、今は「人を恨み続けることはつらい」とこぼす。
「裁判が続く限り、真菜や莉子が望んだ他者への愛にあふれた自分になることはできない」

ブログではそうした思いや、今後の願いを次のように記した。
「自分らしくありたい。そのために、私はあなたと争い続けるためにエネルギーをこれ以上使いたくない。交通事故をひとつでも無くすための活動に全力を注ぎたい」

メディアの取材を積極的に受け、ブログなどでの発信も増やしてきたが、松永さんへの中傷メッセージがネット交流サービス(SNS)に届くことも多くなった。
「発信すればするほど怖くなることもある。しかし、2人の命を無駄にしないためにも、事故をなくす活動を続けたい」と決意を固める。

判決は冷静に受け止めるつもりだ。「正しい判断をしてくれると信じているが、現実は何も変わらない。期待も不安もない」。その上で、松永さんは被告の態度に最後の期待を寄せる。

「自分自身がしたことを受け入れ、心からの謝罪をしてくれたら、前を向いて生きていける。1審が終わった時、人を恨み続けることがやめられたらいい」

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2021年8月26日 16:35
https://mainichi.jp/articles/20210826/k00/00m/040/237000c

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