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米国産スモモの輸入解禁をめぐる動き

米国産スモモ解禁 農家に情報届かず 農水省「正式手順踏んだ」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210829-00010000-agrinews-pol

 農水省は、日本で出回るのと同じタイプの生鮮スモモを、米国から輸入することを認めた。今年6月に解禁方針を官報で通告し、その後、公聴会で意見を聴取。今月19日の官報で解禁決定を告示した。正式に手順を踏んだと同省は説明する。ところが国内産地には一連の情報が全く伝えられていなかった。不満の声が上がっている。(特別編集委員・山田優)

競合産地から不満の声

 米国産スモモの解禁条件は、臭化メチルによる薫蒸をし、米農務省の植物防疫機関が封印をした状態で日本に運ばれること。19日から直ちに施行された。

 「そんなの聞いていない」

 国内生産上位3県の県庁の果樹振興・販売の担当者に解禁へのコメントを求めると、一様に驚いた口調だった。国内のスモモ生産量(2020年)は1万6500トン。山梨と長野、山形の3県で6割を占める。生産量は減少気味だが、各県とも園芸振興の柱の一つとして、高糖度系品種への転換などを支援している。

 JA全農山形は「年間に4000トンを販売している大切な果実。産地では優良品種などの振興に力を入れている。米国産は来年以降、どの程度入ってくるのだろうか」(果実園芸課)と警戒する。

 こうした努力に逆風となりかねない大切な情報が、産地に伝わらなかったのは理由がある。農水省が、知らせる必要がないと判断したからだ。

 「17年にスモモの解禁要請があり、協議状況はウェブサイトなどで明らかにしてきた。公聴会などについては官報で知らせてきた。リンゴやかんきつのときとは違って、産地から問い合わせもなかった」

 農水省の植物防疫課と園芸作物課の担当者は、過去4年間、産地から特段の反応がなかったことから、あえて連絡を取らなかったと説明する。

 一方、米農務省は22日付で、東京発の情報として日本政府の解禁決定の情報を公開した。6月のオンライン公聴会も担当者が傍聴するなど、強い関心を示してきた。

 米国内の果実生産業界は解禁を歓迎する。カリフォルニア州生鮮果実協会のイアン・レメイ会長は「今回の解禁措置でスモモの対日輸出を成功させたい」と地元メディアに語っている。

 米農務省によると、米国内では西洋タイプと日本タイプのスモモが栽培されている。西洋タイプは主に加工されてプルーンとして流通。生鮮はこれまでも日本への輸入が認められていたが、ほとんど出回ってこなかった。

 ただ今回、日本タイプの輸入解禁で、店頭で国産スモモと競合する可能性が出てきた。カリフォルニア産の場合、5月から10月に出回る。

 米農務省の統計によると、米国の生鮮スモモ全体の輸出数量は近年2万〜3万トンで推移している。