自民党総裁選への立候補を表明した岸田文雄前政調会長の発言が波紋を広げている。
「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期までとすることで権力の集中を防ぎたい」と党改革案を打ち上げた。
党執行部の運営に不満を持つ中堅・若手へのアピール材料としたい考えだが、世代交代を警戒する党幹部からは冷ややかな反応が広がっている。

 27日夜、BSフジの番組で、岸田氏の党改革案について問われた佐藤勉総務会長は、
「ケース・バイ・ケースだ。(最初から)決めてやっていくというのはいかがなものか」と疑問を呈した。
同時に「何かあれば辞める覚悟を持って務めている。個人の判断(の余地)は持たせて良いのではないか」と指摘した。

 岸田氏の念頭には、在職5年を超え、史上最長記録を更新中の二階俊博幹事長の存在がある。
党のカネや人事、選挙の公認権などを掌握する幹事長の権限は絶大で、その力を源泉に二階氏率いる二階派は野党議員を引き入れるなど拡張を続けてきた。

 その結果、選挙区調整などで他派閥と公認争いの火種をつくり、党内には二階氏交代を期待する声もある。
岸田氏自身、2019年の参院選広島選挙区で岸田派現職の議席を、後に二階派に入る新人に奪われるなど、しこりが残っている。

 派内の若手の意見を取り入れ、党改革案を練ったという岸田氏は周囲に、複雑な心境を漏らしている。
「最初はもっと過激だった。あれでも抑えたぐらいだ」。二階氏の強硬路線に不満を持つ中堅・若手議員の切り崩しを狙っている。

 だが、岸田氏の「党刷新構想」は、もろ刃の剣でもある。岸田氏が支援を期待する主要派閥の領袖(りょうしゅう)クラスには、
早急な世代交代を望まない重鎮らも少なくなく、改革案がかえって「岸田離れ」につながりかねない。
ある党幹部は「やれるもんならやってみろ」と露骨に不快感を示した。

 (河合仁志、大坪拓也)
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