Jbpress2021.9.1(水)伊東 乾
https://.ismedia.jp/articles/-/66743

ワクチン接種を拒否して死ぬのは勝手だが、周囲に及ぼす影響は考えてほしいものだ

 知らない落語家の名前で訃報が出ていました。私は特段演芸ファンではなく、昭和末期、圓生一門や立川談志などが脱退する前後からの、毎年大量に出てくる「真打」の大半を知りません。

 しかし、亡くなった落語家は1966年生まれ54歳ということですから、すでに30年選手、わたしより2つ若いことになります。

 画像検索では、恰幅のよい初老の顔貌が見られました。芸の道ではいまだ早世と言うべきでしょう。

 同時に、検索されてきた雑誌記事では「反ワクチンの落語家」「コロナは撃退できると真剣に思い込んでいた」「ワクチンを否定した兄さん」「当人が打ちたがっていなかった」などの文字が並びました。

「反ワクチン」の落語家?

 この文字列自体が、相当おかしな話だと、奇異の念を最初に抱きました。

●跋扈する「反ワクチン芸」の類
 このところ「芸能人」インフルエンサーなどによる誤った情報誘導が続いています。悪質さを感じさせられるケースも多い。

 例えば自称「メンタリスト」。冗談みたいなタレントの若者が「年寄連中は人生を謳歌することを知らないだけ、先に死ぬのだから、気にせず若者は町に出よう」式のあおり方をしていたケース。

「科学」を標榜するだけ悪質でした。サイエンスでも何でもない、販促と見えました。

今回の落語家がどこで亡くなったのか確認できませんでしたが、逝去の4日前まで在宅だったこと、かつ同居家族が感染して、今現在入院加療とNHKが報じていました。

 自分一人では済まない。周りにも不可避的に影響が出る。これは「伝染病」であることをもう一度よく思い出し、分別する必要があります。

「打ちたくてもワクチンを打てない人がいる。その代わりに、打てる人が積極的に接種を進め、社会全体の感染症収束に協力していく主体的な選択が重要」

 これが、私が責任を持つ東京大学ゲノムAI生命倫理研究コアの基本的な姿勢、根拠に基づく倫理的な基本原則です。

「接種率」で個人の生命は守れない。でも社会全体の感染者数は抑え込める。医療崩壊だ、在宅だといった現在の状況は回避可能になります。

●PCRを目の敵、危ない「独自判断」
 過日の「メンタリスト」騒動の折、メディアは別の問題、ホームレスの人の生命の軽重といった話題で沸騰していました。

 しかし、現実に1次資料の「元動画」を確認してみると、コロナ蔓延推奨という、非科学・反科学の極みのような当該青年の本当の姿が露骨に見え、私はもっぱらそれが大問題だと感じました。

 影響を受けた若者が街をうろつけば伝染病の蔓延が拡大します。

 今回も、亡くなったばかりの方ですが、この落語家の発信した内容そのものに即して、検討してみます。

 こちらの方の場合、中高齢者の打ち漏らしを誘導しかねないリスクがあったように思われます。

 実際、54歳のご自身が、未接種感染〜重症化の典型的な道筋を歩んでしまった可能性がある。

 第2は千葉真一さんの訃報が出た折。千葉さんご自身は特にご自身の「ワクチンは打たない」といった考えをメディアに載せていたわけではないと思います。

 しかし、訃報ののちメディア上でから「ワクチンを打たなかったというのも、千葉さんらしい一つの選択」といった、ワクチンを打たないことを肯定するようなコメントが見られました。これは微妙です。

 私の身近には、アレルギーのため本当にワクチンが打てない若者もいます。体質上無理なのです。

 他方、未接種で感染すれば、周りに多大な影響、はっきり書けば「迷惑」を与えます。

 最近亡くなったばかりの人ですし(8月27日永眠)、芸事の名でもありますので、本稿には落語家のお名前は記しません。

 その方のフェイスブックに、新型コロナに関する独自見解が載っているとのことでしたので、ご本人の書き込み、実物を確認してみます。最後の書き込みは8月23日午前6時9分、原文をそのまま引用します(絵文字は削除=編集部注)。
(以下リンク先で)